部下や後輩と適切な人間関係の距離感、保ててますか?
職場で部下や後輩を持つ人にとって、会社から求められることは大きく2つありますよね。
「業務遂行」と「育成」です。
業務を遂行してもらうためには、褒めるべきところは褒めてモチベーションをアップさせてあげること。
そして、一人前に育成させていくためには、誤りやミスをしっかりと叱って改善させてあげること。
人それぞれ、自分の中で様々な顔を使い分けながら、個々の場面に対応していると思います。
でも、実際そのバランスってとても難しいですよね。
「褒めすぎたら調子にのってしまうのではないか?」かといって、
「叱りすぎて会社を辞めてしまったら大変だ…」。そんな思いが頭をめぐっている人が多いと思います。
僕は「褒める」ことに関しては得意な方ですが、「叱る」ことに関しては大の苦手です。ついつい相手の反応や、今後の人間関係のことを気にしてしまいます。
自分の軸としてどういうスタンスでバランスをとるべきか、考える中でビジネス心理学者の伊東明氏の『ほめる技術、しかる作法』から得たヒントをご紹介したいと思います。
- 作者:明, 伊東
- メディア: 新書
目次
- 部下や後輩と適切な人間関係の距離感、保ててますか?
- 「褒める」と「叱る」の究極のバランス
- なぜ、褒めることは大切か?
- 実践可能な上手な褒め方のポイント
- 叱るときのバランスをどうとるか?
- 相手との関係性を壊さない上手な叱り方のポイント
- まとめ
「褒める」と「叱る」の究極のバランス
図で説明すると以下のようになります。
縦軸を叱る頻度、横軸を褒める頻度でとった場合、星の位置が最適なバランスの位置となります。
つまり、「褒める」に関しては、褒めれば褒めるだけ良い。
そして、「叱る」は叱りすぎも叱らなさすぎもダメ。
という結論になります。
なぜ、褒めることは大切か?
「褒めること=あなたと良好な関係を築きたいというメッセージ」だからです。
これは様々な研究でも提言されていることです。
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ラベリング理論
これは人に対して「あなたはこういう人間です」というラベルを貼ると、貼られた人間は実際に自分のことをそういう人間だと思い込み、貼られたラベル通りに行動するというものである。たとえば、同じ学力の子どもを二つのグループに分け、一つのグループには「君たちはできる子だから絶対伸びる」というラベリングを行い、もう一つのグループには「君たちは能力的に劣っているから、これ以上は伸びないだろう」というラベリングをしたとする。すると半年後には、最初は同じ学力だったはずなのに、前者と後者の学力差が実際に開いてしまうというものだ。ほめることによってプラスのラベリングが行われ、セルフイメージが高まる。そして現実に能力もアップするのである。
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ハーズバーグの「衛生要因」と「動機づけ要因」理論
衛生要因とは、それが満たされないと不満に感じるが、といって満たされるだけでは真の満足感は得られないというものだ。ハーズバーグは衛生要因の代表的なものとして、給与や就労条件を挙げている。そして、真の満足感を得るためには仕事に対する達成感や承認、自己成長などの動機づけ要因が不可欠であるとする。つまり給与や休暇だけでなく、仕事に対する達成感や周囲からの承認といった「目に見えない待遇」が不足していると、人は意欲をもって働き続けることができないのだ。ハーズバーグ流に言えば、「ほめる」は動機づけ要因にあたる。どんなに給与面や福利厚生面が充実していても、「ほめる」が欠けている職場では、やがてスタッフは元気を失い、そしてやめていく。
実践可能な上手な褒め方のポイント
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スモールステップを繰り返す。
褒めることは、なにも大きな偉業を成し遂げた時だけにするべきことではありません。日常のささいなことを褒めてあげることを日々繰り返すことが大切です。
例えば、後輩がつくった資料が今日はいつもと違うフォントになっていたとしたら、「いつもより見やすくなっているね。」という一言を言語化するだけでOKです。
これは、相手に対するフィードバックにもなりますし、また褒めることを意識することで自分にとっても職場環境の変化に対して気づきやすくなります。
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他人ではなく、過去の本人と比べて褒める。
褒め方の視点として、「相対的にみる」視点と「絶対的にみる」視点の2つの視点があります。相対的にみる場合、どうしても相手が他の人と比べて秀でている部分にしかスポットが当たりません。
仮に、目の前にいるA君の成績が平均点60点の試験で半年前かけて20点くらいの落第点だったところから頑張って50点まで伸ばしたとします。
相対的に見た場合、まだまだ平均点以下で褒められた点数ではありません。
しかし、絶対的に見た場合、「半年前から倍以上の点数をとっている」と見ることもできます。
そして、何より絶対的な視点を持って本人と向き合うことで、相手にとっての自己肯定感につながるのです。
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褒めるに徹する。
褒める努力をしてたくさんのいいところを言語化してあげても、1つ落とし穴があります。それは、最後の最後で余計な一言を言ってしまうということです。
「〇〇なや××なこともできるようになってすごいね!でも、あと▲▲だけが惜しいんだよね。」
こんな言い方は、NGです。
なぜなら、相手からすると最後の▲▲の部分だけが、頭から離れなくなってしまうからです。せっかく、モチベーションを上げるために褒めたのに、最後の一言でモチベーションだだ下がりになってしまうのです。だから、褒める時は褒めることだけに徹するということだ大事なのです。
叱るときのバランスをどうとるか?
「叱る=怒りをぶつける」ということではないという意識を持つことです。
叱る理由が、相手の行動ではなく、自分自身のイライラ度合いという人がいますが、これは人間関係の崩壊まっしぐらです。叱ることの本質とは、相手にとっての問題の認識と改善を促すことなのです。
相手との関係性を壊さない上手な叱り方のポイント
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相手の人格を否定しない。
叱り方が下手な人の特徴としては、「人格」と「行動」を切り分けて考えられない点が挙げられます。部下や後輩が何かミスをしてしまった時、「お前はそんなんだからダメなんだ!」というような、問題点が不明確であたかも相手自身に非があるような指摘です。
これでは、単に相手に精神的ダメージを与えるだけで、職場の空気が悪くなる一方です。
そうではなく、冷静に状況を判断してミスしてしまったという行動に対してフォーカスして、改善を促すことが大切です。
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なぜ?という問いかけから始める。
状況を判断する時や、改善すべき点を洗い出すためには、叱る相手から言葉を引き出さなくてはいけません。その為には、質問力がカギです。相手が「すいません。」「申し訳ございません。」としか、言えないような言い方ではなく、「なんで、こうなったの?」「どうして、そうなってしまったの?」といったオープンクエスチョンで質問することがポイントになります。
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ギャップを利用する。
相手に反省する意思が全くない、社会通念上において明らかに間違ったことをしている。
そんな場面に遭遇することもあるかもしれません。この場合は、しっかりと感情を全面に出して怒るということも、育成という観点からは重要であると思います。
その時は、ギャップを利用することが効果的です。
普段から怒りっぽい人に怒られても、どの程度の重要度合いなのかはわかりづらいです。
しかし、普段は冷静や優しい人が感情的に怒るとなると、その重要度の高さは相手にも伝わります。つまり、「感情的に怒る」というカードは、本当に重要に場面まで取っておかなくては、その効果は発揮できないのです。
まとめ
・褒める叱るのバランスは、褒める>叱る。
・「褒めること=あなたと良好な関係を築きたいというメッセージ」
・「叱ること=相手にとっての問題の認識と改善を促すメッセージ」