日本一ベンツを売る男が実践するセールスの3つの秘訣。
メルセデス・ベンツと言えば、「高級外車の代表格」、「成功者の証」と呼ばれるような車です。クラスによっては、一台で一千万円も超えてきますよね。
そのメルセデス・ベンツを日本で一番で販売するセールスが吉田満氏です。
年間160台、累計販売二千台という途方もない記録の持ち主です。
今回はその吉田氏について書かれた『日本一メルセデス・ベンツを売る男』から、セールスの3つの秘訣についてご紹介したいと思います。
目次
「適正」が仕事の成否を決めた。
日本一のベンツのセールスマンである吉田氏は、もともとは社内の問題児社員だったそうです。
裕福な実家で生まれ、家業を継ぐまでの修行として、コネで入社したのが、メルセデス・ベンツの麻布の販売店でした。
しかし、入社当時は、メカニックの担当部署に配属されますが、仕事に全く身が入らず、遅刻・早退・欠勤を繰り返し、昼はサーフィン、夜はクラブ通いの超問題児社員で、解雇寸前まで追い詰められます。
そんな折、たまたま営業担当に配属されたことが吉田氏の転機でした。
お客さんに車を販売するというセールスの仕事に対して、楽しさを覚えてのめりこんでいき、みるみるうちに成果を出していくのです。
セールスにおける3つの秘訣
120%のサービス
儲けにならないことでもする。
吉田氏の販売する車は、メルセデスに限られます。
しかし、顧客の望む車は他のブランドの車である場合もあります。
例えば、前回は吉田氏からメルセデスを購入した顧客が、次はフェラーリかベントレーを検討しているという話を聞けば、自分には利益はなくとも、知り合いの他ブランドのディーラーの紹介までするといいます。
本来であれば、なんとか自社の製品を買ってもらえるように、そのメリットを必死に説明するか、「どうぞ、ご自由に」とリリースしてしまうのが普通です。
しかし、そこで真摯な態度をとることによって、今後の関係性の継続につながるのです。
誰も気づかないところまで気を配る。
車の購入において納車は、顧客にとっても、ディーラーにとっても一大イベントです。
キズや汚れの一つも許されません。
ある時、吉田氏は納車で首都高を通過する場面がありました。
当時はETCもない時代で、料金所の精算で窓を開けなくてはいけませんでした。
しかし、彼は「前日降った雨の水滴が残っていて窓を開けるとガラスが汚れてしまう」という理由で、わざわざドアを開けて料金所で支払いを済ませたという逸話があります。
正直、言われなければわからないほどの気遣いです。
しかし、そこまで意識が回るほど、すべての所作において商品を丁寧に扱う精神が、言葉にしなくても全身からにじみ出てくるのだろうと感じます。
対等な立場
おすすめできないものは売らない
顧客が望むものであっても、それが顧客にとって本当の意味で「正しい選択」とは限らないという場合があります。
どういうことかというと、
例えば、顧客が購入を望んでいる車種があったとします。
実は、その車種がモデルチェンジを半年後に控えている、という内部の人間しか知らない情報があった。
普通でいけば、あえてその内部情報を伝える必要はありませんし、要望通りに買ってもらうことで十分です。
しかし、吉田氏は短期的には売り逃しにつながるリスクを承知しながらも、長期的な目線で顧客にとって正しい決定ができるように、情報を隠さず伝えることで「新たな選択肢」を用意するのです。
社内のルールはあるかもしれませんが、顧客満足に対してギリギリのところまで攻め込むスタイルを崩さない点に、No.1セールスの片鱗を見せます。
身だしなみまで顧客に合わせる
ベンツを購入する顧客は、社会的地位も収入も高水準な人がほとんどです。
そんな顧客に対して、当時、二十代の若手セールスであった吉田氏がとった手法が、「見た目で負けない」という方法です。
自腹で購入したベンツに乗って、月収ほどもする高級スーツに身をまとって、営業に出ていたといいます。
一見、薄っぺらい手法のように思われがちですが、人は見た目が9割というように、
どんな人も視覚情報から物事を判断します。
ベンツのセールスが、国産車に乗ってヨレヨレのスーツで営業にきたのでは、話も聞いてもらえません。
まずは、話を聞いてもらうというスタートラインに立つために、この手段はある意味、的確だと思います。
しかし、相手は人生経験豊富なエグゼクティブです。
もちろん、彼らも吉田氏の外見だけですぐダマされるワケではなく、そんな不器用な努力はお見通しだったそうです。
でも、お見通し故に、逆にその生意気さを買ってもらい、話を聞いてもらうことができていたのです。
仕事を楽しむ
自分の売る商品を愛する
吉田氏は、その抜群の営業力から数多くのヘッドハンティングが舞い込みます。
しかし、その依頼はすべてを断っているというのです。
その理由を、本人はこう語ります。
「自分の好きなもの以外売れないから」
収入の増加やポジションのアップではなく、やりがいで仕事を選ぶという選択。
それが、その道の頂点まで上り詰める最大の秘訣なのかもしれません。
考察
仕事での成功とは、「適性」×「好き」の歯車が完全にかみ合うことによって、ドライブしていくものなのだと、改めて感じます。
吉田氏がセールスという天職に巡り合えたのは、「たまたま運が良かった」だけかもしれません。
しかし、セールスという仕事を与えられるまでは、徹底して興味のない仕事を捨てる大胆さも持ち合わせていました。
この大胆さがなければ、ダラダラと適性の合わない仕事をし続ける運命をたどっていたかもしれません。
自分の確信をもって適正のある大好きな仕事がある人は、自分からそれを取りに行くというスタンスで、良いと思います。
ですが、大多数の「自分の適性や本当に好きなれるものもよくわからない。」という人は、まずは目の前の仕事に対して、我慢をしすぎず、純粋な感情を持って接していくことが、新たな発見を生むきっかけになるのではないでしょうか。