世界最大のオンライン小売業として、絶大な存在感を誇るAmazonについては、もはや説明不要でしょう。
最近では、動画配信の「アマゾンプライム」や音声配信の「アマゾンオーディブル」など、小売業の枠を大きく超えて、世界随一のIT企業に変貌を遂げています。
そんな、Amazonを一代で築きあげてきた天才が、ジェフ・べゾスです。
ジェフ・べゾスの経歴
名門であるプリンストン大学を首席で卒業後、あまたの大手企業からの誘いをすべて断って、IT系のベンチャー企業を3社渡り歩きます。
そして、彼が30歳を迎える1995年に、インターネットの持つ大きな可能性を感じ、Amazonを創業したのです。
その後のAmazonの成長は、皆さんもご存じの通りですが、その裏でCEOであるべゾスが、どのような意思や価値観を持ち、どのような行動をしていたのか。という表で語られることの少ない事実を、『ジェフ・べゾス アマゾンをつくった仕事術』を参考にしながら、紐解いていきたいと思います。
- 作者:桑原 晃弥
- 発売日: 2014/08/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
また、現在は世界一の富豪となり、天才と呼ばれるべゾスですが、創業当時には、徹夜で注文の入った本の梱包をしていたというエピソードも残っています。
彼から学ぶことができるのは、突飛で常識はずれな経営論ではなく、むしろ、僕らサラリーマンが明日からにも実践できる身近なことの積み重ねだとも感じます。
「行動」「計画」「時間」「仕事術」「長期戦略」という5つの側面から、べゾスの残している名言を抜粋して、そこから得られる教訓をご紹介したいと思います。
「行動」
まず始めてみる必要がある。
最初の小さな丘に登れば、
その頂上から次の丘が見える。
べゾスがAmazonを創業する前に勤めていたIT系の金融会社でのエピソードです。
今となっては信じられませんが、顧客が自分の金融情報をWEB上で閲覧することができませんでした。
すべて、紙の印刷物で顧客に送付する方法を取っていたのです。
そこで、べゾスがWEB閲覧の提案をすると、「なんのためにそんな投資が必要なんだ」と古参の社員たちから猛反発を受けたといいます。
しかし、試行錯誤をしてそのシステムのプロトタイプを実際に作って反対していた社員たちの前で提案すると、周囲は賛同者に変わっていったといいます。
つまり、周囲の説得という事柄においても、一回の反発で諦めてしまうのではなく、どうしたら説得ができるかどうかチャレンジをしていくことの重要性を学びとることができます。
また、彼は「何度でも実験すること」を推奨しています。
それは、何事もやってみないで議論を繰り返すだけでは何も生まれないということを知っているからです。
エジソンも同じような名言を残しています。
「私は失敗などしていない。うまくいかないやり方を一万通り発見しただけだ。」
そこからの教訓は、凡人は一回失敗するとあきらめてしまうが、
天才は何回失敗しても立ち直す力を持っているということだと感じます。
計画
現実は計画通りにはいかない。
でも、計画を立てることで問題点をよく考えることができる。
考えや気持ちが整理され、気分もよくなっているんだ。
べゾスは几帳面で、緻密な計画を立てることが得意だといわれています。
そこまでは、一般的にもそのようなタイプの人はいると思います。
しかし、彼が飛びぬけて優れている点は、120%のエネルギーを注いで考え抜いた計画をいとも簡単に捨てて、新しい計画をさらなるエネルギーで作り直すということです。
起業をした際に作成した「事業計画書」も、1年後にはすべて1から作り直したというエピソードも残っています。
そして、数年後にはその計画すらもAmazonの成長の中で陳腐化していったといいます。
そこから得られる教訓は、目的は変えてはダメだが、計画は変え続けなければダメ。
という変化に対する考え方だと感じます。
時間
君の仕事は、
今までしてきた事業をぶちのめすことだ。
Amazonは自分たちにとって最も大切な商品である「紙の本」を自らの手で「ぶちのめす」ような行動をしています。それは、電子書籍である「キンドル」の開発です。
それまでの製品を一瞬にして、過去の遺物に変えるようなイノベーションを起こしているのです。
なぜなら、破壊的な製品の開発をためらったなら、やがて他社から革命的な製品が発売され、自分たちの製品が過去の遺物になってしまう可能性もあるからです。
過去には、自動車業界において、フォードがT型フォードの開発によって、これまでは一部の富裕層だけのものだった自動車を、一般大衆の乗り物に変えたことで、馬車や馬具の製造メーカーを壊滅状態に追いやっているという歴史もあります。
そこから得られる教訓は、
ビジネスは自分で自分の過去を追い越すスピード感を持って行わなければならない。
ということではないでしょうか。
仕事術
自分たちは探検者である。
この言葉の意味合いは、Amazonはオンライン小売業というまだまだ未開の業界において、他社の良い部分を取り入れながら、探索を続けるということを指しています。
彼らは、様々な会社から良い部分を取り入れています。
例えば、顧客に向けたメッセージでは、コストコやウォルマートが標榜する「エブリデーロープライス」というスローガンを惜しげもなく使っています。
それは、彼らのターゲットとする顧客が、限られた高所得者ではなく、コストコの会員になるようなより安いものを求める大衆だからです。
だから、そのような顧客層の心に届くメッセージは即座に採用するのです。
また、膨大な商品を管理する物流センターでは、日本のトヨタが実践する「トヨタ生産方式」を導入しているといいます。
物流センターのコンベアで従業員がけがをするという事故が起きた際には、べゾス自身が現場に足を運び、「なぜ?」を5回繰り返して考えるのだそうです。
そこから、学ぶ教訓は、半端なコピーでは失敗する。堂々と盗んで成功を手にする。
ということだと思います。
長期戦略
決して変わることのないものを土台に戦略を打ち立てる。
Amazonにとっての普遍的な3つのアイデンティティがあります。
- 常に顧客中心で考える。
- 発明を続ける。
- 長期的な視野で考える。
べゾスは、10年後もこの3つの考え方については、変えるつもりはないと言い切っています。つまり、ディティールには柔軟ですが、ビジョンに対しては非常に頑固なのです。
このように、「変えること」「変えるべきこと」をしっかり持つことは、どの会社でも実践されていることですが、多くの会社が簡単に変えてはいけないことを変えてしまったり、変えるべきことを変えられなかったりして失敗を繰り返しています。
その意味で、べゾスの判断基準は非常にバランスが優れているといえます。
ビジネスは変化を前提に。ビジョンは不変を前提に。という教訓から、もう一度自分の会社のスタンスを振り返ることは大切なことです。
まとめ
- 天才は何回失敗しても立ち直す力を持っている。
- 目的は変えてはダメだが、計画は変え続けなければダメ。
- ビジネスにおける最適のスピードは、「自分で過去の自分を追い越す」速さ。
- 半端なコピーでは失敗する。堂々と盗んで成功を手にする。
- ビジネスは変化を前提に。ビジョンは不変を前提に。