目まぐるしく毎日のように襲い掛かってくる仕事の数々。
自分の経験と勘だけを頼りに乗り切ってきませんか?
心当たりのある方は、一度立ち止まって考えてみましょう。
- 成功確率はどのくらいですか?
- 具体的なアクションプランは考えていますか?
- 将来的にどんな事業にしていきたいですか?
このような、
ちょっと目を背けたくなるようなことは考えていますか?
日本の起業家としては、
トップクラスの大成功を収めたソフトバンク社長の孫正義さんは、
これらのことを脳から汗が出るほど練って、事業をスタートさせたといいます。
そして、前回記事でも参考にした『孫社長にたたきこまれたすごい「数値化」仕事術』をベースにして、孫さんも起業する中で重要視していた7つの理論と法則についてご紹介したいと思います。
- 作者:三木 雄信
- 発売日: 2017/08/18
- メディア: 単行本
目次
①大数の法則と期待値
ざっくり言うと、
「トライアルの回数を増やせば増やすほど、その物事が実際に起こる確率は理論値に近づいていく」
というものです。
つまり、トライアルの数が増えれば増えるほど、
理論値と実際の結果が近づいてくるというものです。
また、「期待値」とは、一回のトライアルで見込める結果です。
例えば、
サイコロを使ったゲームで、出た目の数に応じたお金がもらえたとしましょう。
金額は、「1」が一万円、「2」が二万円、「3」が三万円…
と増えていきます。
この場合、「サイコロを一回振った結果、いくらもらえるか」
の見込みは次のように計算できます。
(大数の法則によって、6つの出る目の確率はそれぞれ1/6)
(10,000×1/6)
+(20,000×1/6)
+(30,000×1/6)
+(40,000×1/6)
+(50,000×1/6)
+(60,000×1/6)
=35,000
この35,000円が、サイコロゲームの期待値になります。
つまり、このように期待値を把握することが、
これから自分がとるべきアクションの意思決定の判断材料になるのです。
そして、より大きな期待値が見込めるアクションの選択をしていくべきです。
②鮭の卵理論
鮭は一回の産卵で、
2,000~4,000個の卵を産みますが、そのうち成長して川に戻ってくるのは、
わずか2匹だけと言われています。
生き物の生態系は、多産多死によって均衡が保たれています。
しかし、それはビジネスの世界にも同じことが言えます。
ベンチャー投資の話になりますが、
ソフトバンクは、数あるベンチャー企業の中から「ヤフー」「アリババ」「ガンホー」等の、大成功を収めた会社に投資をしていました。
ソフトバンクがこの成功をもともと見抜いていたか?
というと、決して100%ではありません。
この鮭の卵理論を使って、当たるまで続けるという「数うちゃあたる」を、
愚直にチャレンジしていたのです。
一方で、何も考えず盲目的に投資を数うっていたわけでもありません。
投資をくじ引きに例えると、
・アタリの多そうなくじ箱を探す
⇒今後、伸びしろがありそうな投資先を探す。
・くじを引くコストを下げる
⇒複数会社で出資し、単体の投資コストを下げる。
・くじを引き続ける
⇒ひたすら投資活動を続ける。
③72の法則
業界についての大まかな将来予測をするためのツールが「72の法則」です。
計算のやり方は、非常にシンプルです。
72を業界の年平均成長率で割るだけです。
この計算をすると、
「現在の売上が2倍にばるまで、何年かかるか?」
ということがわかります。
これを応用することで、
「目標を達成するために、年何%で成長しなくてはいけないか」
ということもわかります。
では、なぜ年間成長率がそこまで大切なのかも解説していきます。
それは、年間成長率は、「単利」ではなく、「複利」で効いてくるからです。
単利と複利の違いは、よく利息計算で例えられます。
・単利の場合
元金100万円を年利10%で運用します。
「100万円×10%=10万円」
なので、毎年10万円ずつ利息がつく計算になります。
・複利の場合
同じく、元金100万円を年利10%で運用します。
1年目だけは単利と同じで、「100万円×10%=10万円」ですが、
2年目以降からが変わってきます。
2年目「(100万円+10万円」×10%=11万円」
3年目「(100万円+11万円」×10%=12万1千円」
つまり、複利は年が経つごとに雪だるま式に利息が膨れ上がっていくということです。
これが、30年後になると…
・単利の利息⇒400万円
・複利の場合⇒1,744万9402円
その差1,300万円以上となります。
例えば、これを新聞業界に置き換えると、
新聞業界の現在の市場規模は1兆8000億円で、年間成長率は-2%です。
これに、「72の法則」を使うと、
「36年後に市場規模は2分の1になってしまう。」
という計算が成り立ちます。
つまり、市場規模9000億円という驚くべき数字が予想されるのです。
このことから言えるのは、
成長ドメインに居続けること大切さです。
ソフトバンクもIoTの成長可能性を察知し、いち早くアームの買収を実施しました。
また、マイナス成長業界であっても、例えば新聞の電子化など、成長が見込める分野への投資などが考えられます。
あなたがこれから挑戦しようとしていることは、
上りエスカレーターでしょうか?
下りエスカレーターでしょうか?
まずは、そこを知ることが大切です。
④限界効用逓減の法則
「限界効用逓減の法則」とは、
「量が増えるごとに、1単位あたりの効用は次第に減っていく」
という法則を示しています。
もう少しわかりやすく言うと、
食べ放題のバイキングでも、初めのうちはどの料理もすごくおいしく感じられるのに、
お腹が満たされていくと次第に、おいしいという感覚も鈍ってくる。
というような現象で説明ができます。
ビジネスに置き換えると、どんな素晴らしい商品やサービスでも、
無限に需要があり続けるということはないのです。
つまり、人気だからといって発注数を2倍にしたとしても、
必ずしも売上も2倍になるとは限らないということです。
ビジネスが軌道に乗って、規模を拡大するフェーズになった時にも、
この法則が頭の片隅にあるとないでは、成果が大きく異なってくるはずです。
⑤ダンバー数
「限界効用逓減の法則」では、数増えてごとに効用が鈍くなってくるという法則でしたが、数が増えるごとにマイナスの効果が出てくるという「規模の不経済」を示す法則がこの「ダンバー数」です。
「ダンバー数」については、
イギリスの人類学者であるロビン・ダンバー氏が、
「安定した集団を維持できる個体数には限界がある」
と主張したことからそう呼ばれ、組織マネジメントの部分で使われることが多いです。
ベンチャー企業では、組織をマネジメントする上での最大人数は、「300人」と言われています。これが、組織マネジメント上のダンバー数です。
なぜ、300名かというと、その人数を超えると以下のような事象が出てくるからです。
- 顔や名前を知らない人が出てくる。
- 仲間意識や一体感が生まれづらくなる。
- 高いモチベーションが維持しづらくなる。
では、300名以上の会社は存在しないのか?
と言われるとそんなことはありません。
日本には、数多くの大企業が存在しています。
そして、それらの会社はおおよそ300名以下という単位を区切りに、
部署や部門を分けて、それぞれにマネジメントの要因を配置しています。
しかし、大企業が1つの会社として、一体感がまるでなかったり、部署同士の揉め事を無くならないのを考えると、ダンバー氏の主張の正しさを認めざるを得ないでしょう。
⑥マジックナンバー7
組織の単位は、300名以下が理想でした。
では、1人の人間がマネジメントできる最大人数は何人でしょう。
答えは、「7名」です。
これは、アメリカの認知心理学者であるジョージ・ミラー氏が主張する
「人間が短期的に記憶できる容量は7個前後」という法則からも言えることです。
僕らの回りには、7という数字に支配されています。
- 1週間は7日⇒地球の自転を7カウントで1週間とされている。
- 人間の免疫の変化は7年周期。
- 人間の骨髄液は7年ですべて入れ替わる。
これが、「マジックナンバー7」と呼ばれる由縁です。
ちなみに、本書の筆者である三木氏が、
「ヤフーBB」の統括選任者を務めていた際も、
「チームが回らない」「部下の面倒が見切れない」という現場の声に対して、
13のユニットと、サブユニットからなる多重構造の5名単位のチームを編成したことで、それの問題が解消されたといいます。
⑦イノベーター理論とキャズム理論
アイデアや技術は画期的だったのに、一部のマニアの間だけで盛り上がっただけで、
いつの間にか市場から消えていた。
そんな一般化までたどり着けなかった商品やサービスは、
皆さんもいくつか思い当たるのではないでしょうか。
では、どうすれば一般化までたどり着けるのか?
そのプロセスを明確な数値で答えてくれるのが、
スタンフォード大学の社会学者エベレット・ロジャーズ氏が提唱する「イノベーター理論」と、アメリカのマーケティングコンサルタントのジェフリー・ムーア氏が提唱する「キャズム理論」です。
■「イノベーター理論」
商品購入の態度によって消費者を5つのグループに分類。
・イノベーター(革新者)
⇒新しいものを進んで採用する人。全体の2.5%。
・アーリーアダプター(初期採用者)
⇒流行に敏感で、自ら情報収集を行い判断する人。全体の13.5%。
・アーリーマジョリティ(前期追随者)
⇒新しいものの採用に比較的慎重な人。全体の34%。
・レイトマジョリティ(後期追跡者)
⇒新しいものの採用に懐疑的な人。全体の34%。
・ラガード(遅滞者)
⇒最も保守的な人。流行が一般化するまで採用しない。全体の16%。
ロジャーズ氏は、普及率16%がターニングポイントと語ります。
イノベーターとアーリーアダプターを含めた16%まで商品が広がると、
そこからは一気に普及・浸透していくというのです。
さらに、ロジャーズ氏は目新しさを重視するイノベーターよりも、
その価値に注目するアーリーアダプターこそ、最も影響力を持ち、
マーケティングに注力すべき層だと語っています。
■「キャズム理論」
ジェフリー氏は、ロジャーズ氏の「イノベーター理論」にこう付け加えています。
「アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間には、容易に越えられない深く大きな溝(キャズム)が存在する」
つまり、ロジャーズ氏が言うようにアーリーアダプターに訴求するだけでは、不十分で、アーリーマジョリティへのマーケティングも必須であるという主張という訳です。
最後に
7つの理論と法則はいかがだったでしょうか。
記事を読んでくれた方の中で、この中の一つでもピンとくるものがあれば、
幸いです。
僕自身も、この記事を書きながら、自分の会社を見つめなおして、
「ダンパー数」超えてて完全にヤバイな…とか
「ラガード」向けの商品・サービス提案ばかりだな…とか
多々、思うところがありました。
実際の現場でもこの危機感を忘れず、
改善に努めたいと思っております!