過去に一緒に仕事をしてきた中で、
圧倒的に「この人デキる!」と自分が思っている上司が何名かいます。
その方々の共通点は、
「断ることができる。」
ということです。
しかも、相手に対して不快感を与えないばかりか、
むしろ、敬意すら払われるような上手な断わり方ができるのです。
一方、自分は?というと、
どんな依頼でも自分の時間が許す限り請け負ってしまうお人好しです。
ポジティブな側面では、
- 頼りにされたい。
- 何事も勉強になる。
- 人間関係を悪化させたくない。
ネガティブな側面では、
- ただのいい人になってしまっている。
- 都合の良い人と思われている。
- 実際のところ深い関係性は築けていない。
こんなことが言えると自己分析しています。
では、デキる上司の面々と僕は、
根本的に何が違うのでしょうか?
それは、
「自分にとって一番大事なものをわかっているか?」
その認識の違いだと思っています。
このような考えは、「エッセンシャル思考」と言われています。
「一番大事なもの以外は、すべてそぎ落として洗練させる」という考え方です。
「自分が果たすべき目標から逆算してイマは、何をすべきなのか?」
ということを理解しているか、そうでないか。
によって、目の前の時間の価値は大きく変わってきます。
デキる上司は、
依頼された仕事と自分の時間の価値をしっかり熟慮しているのです。
一方僕は、
業務の重要度と時間のバランスに対する感覚が鈍かったとしか言いようがありません。
「仕事に優先順位をつけて、目標から逆算して仕事を行う。」
という意識は自分でも、徐々にできるようになりました。
しかし、どうしても難しかったのが、
「断る」ということです。
「なんで、自分は断る勇気がないのだろう。」
ということで悩んだ時期もありましたが、
その悩み自体が間違っていることにある時、気がつきました。
「断る」ということに必要なのは、
勇気ではなく、テクニックなのです。
そのヒントをくれた『エッセンシャル思考』を参考に、
上手に「断る」ためのポイントを3つに絞ってご紹介します。
上手に「断る」為の3つのテクニック
判断を関係性から切り離す。
この要素が自分に最も足りない視点だったと思っています。
つまり、
「頼みを断ること」≠「相手を拒絶すること」
ということなのです。
太古の昔から人間という生き物は、仲間と協力し合って狩猟や採集を行うことで、
子孫を残してきました。
その歴史的な背景からも、人間のDNAには「協調性」という意識が根底に根付いているのです。
現代に生きる僕らも、無意識のうちにこのDNAの影響を受けているのです。
しかし、時代は違います。
過去と現代では、一人で行うことのできる時間あたりの価値が異次元レベルで異なることを割り切って考えなくてはいけないと思います。
過去は、自分の時間を相手に捧げることが「生きる術」。
現代は、自分の時間を確保することが「自分らしく生きる術」。
なのです。
直接的でない表現を使う。
人間関係に振り回されていけません。
しかし、だからといってそれはないがしろにして良いものでもありません。
時には、直接的な表現を避けてやんわりかわすことも重要です。
マネジメントの父と呼ばれるピーター・ドラッカーは、
「肯定的な否定」をすることにとても長けていました。
彼が著名な心理学者からの創造性に関するインタビュー依頼をお断りした時の、
手紙で使われている秀逸な表現を引用したいと思います。
お手紙を拝読し、光栄に思っております。
貴殿のご活躍は常々拝見しており、多くを学ばせていただきました。
そのようなお方を失望させるのは非常に心苦しいのですが、
残念ながらインタビューに答えることは不可能なのです。
創造的と言われましても、私はその意味を存じておりません。
私はただ地道に進んでいるのみです。
無礼な奴だとお考えにならないでほしいのですが、
私にとって生産性の秘訣とは、特大のくずかごを用意し、
すべてのこうした誘いをその中に入れることなのです。
これまでの経験から言って、
生産性とは他人の仕事を助けることではありません。
天から与えられた才能を最大限に生かすべく、
持てる時間のすべてをそこに費やすことなのです。
引用:『エッセンシャル思考』
トレードオフに目を向ける。
「イエス」と答えてしまう前に、考えることが重要です。
「イエス」と言うことで、自分は何を失うだろうか?
「ノー」ということで、別の価値あることができるだろうか?
という機会コストを念頭に入れることです。
つまり、自分の時間を安売りしてはいけないということです。
この例としては、アメリカの有名グラフィックデザイナーである
ポール・ランドとアップルのスティーブ・ジョブズとのある有名なやり取りがあります。
1985年に立ち上げたNeXT社のロゴを探していたジョブズは、
数々の有名企業のロゴを手掛けていたランドに連絡をとり、
「いくつか候補を出してほしい」と依頼した。
けれどもランドは、「いくつもの候補など出さない」とジョブズに告げた。
「仕事はしますよ。それで気に入らなければ、使わなくても構いません。
候補をいくつもほしいなら、ほかを当たればいい。
私は、自分の知る限り最高の答えを一つだけ出します。
使うかどうかの判断は、そちらでしてください。」
そして、ランドは「これしかない」という答えを出し、ジョブズを感動させた。
引用:『エッセンシャル思考』
まとめ
「断る」ということを身に付けることのメリットは、
- 長期的に重要なことに時間が投下できる。
- 中途半端な仕事をしないで済むので相手に迷惑をかけない。
- ランドがジョブズから得たような敬意を手に入れることができる。
しかし、
- 自分が楽をしたいから
- 単純に面倒くさいから
といった相手に見透かされる安易な理由での「断り」は禁物です。
あくまで、正しい「断る」行為というのは、
明確な目標とそれに向かって努力を続けている人が、
努力を継続し最大化するための手段だということを忘れてはいけないと思います。