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30代ビジネスマンの備忘録。 マネジメントやマーケティングに関するビジネススキルや、サウナ、ウィスキー、時計などの趣味について。

【エリートVSアントレプレナー】大企業がイノベーションを起こせない理由。

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【エリートVSアントレプレナー】大企業がイノベーションを起こせない理由。

 

大企業勤めを始めて10年が経とうとしています。

その10年で会社に対して感じることは、

「時代への対応の遅さ」

ということです。

 

僕が10年前に入社した時には、

まだ存在していなかった新しい企業が普通にやっていることが、

全くできてなかったりもします。

 

例えば、

 

結果、目新しいサービスはまだ1つも誕生していません。

(じゃ、お前がやれよ。というツッコミはご容赦ください。)

 

当時の自分が大企業を選んだ理由は、

「仕事の裁量権が広い、規模の大きな仕事ができる」

という部分が大きかったように思います。

 

しかし、誤算だったのは、

確かに裁量権も広いし、仕事の規模は大きいのですが、

それは限られた業界内で、商慣習的に脈々と受け継がれてきたものを、

ひたすら繰り返すという作業だということです。

 

初めのうちは、「こんなすごいことをやらせてもらえるんだ!」

と心躍りましたが、そのうちにそれがすごく小さな業界という世界に限定された

活動だとわかってきました。

 

つまり、業界という小さな世界の巨人ではありますが、

その世界の外には出られないのです。

 

そこには様々な伝統やしがらみがあって、

出口も塞がれていれば、行動も制限されているのです。

 

この記事では、そんなもどかさを抱えながら大企業で働く自分に、

客観的な目線と新しい示唆を与えてくれた山口周氏の

『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』を参考に、

これからの大企業のあるべき姿について考察したいと思います。

 

過去の歴史 

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僕の勤めている会社以外にも、

多くの大企業が長い歴史と富を持っていながら新しいフィールドでの

主要プレイヤーになれなかったという事例は、歴史も語っています。

 

検索エンジンの場合 <Google> VS< NTT>

 

Google

1998年にカルフォルニアのマウンテンビューで、

ラリー・ペイジセルゲイ・ブリンのたった2人でスタートした

Googleですが、今や世界最大最強の検索エンジンを持つ巨大IT企業に変貌しています。

 

< NTT>

1989年当時の世界時価総額ランキングで第1位であったNTT。

実はGoogleに先んじて1995年にNTT Directoryという検索エンジンサービスを

開始しています。

しかし、このサービスが大きな商業的な価値を生み出すことはありませんでした。

 

Eコーマスの場合 <Amazon>VS<IBM

 

Amazon

1994年にワシントン州シアトルで創業。

設立当初は、小さなガレージでオンライン書店として経営をしていましたが、

その後の規模拡大によって、現在は世界最大のオンラインショッピングサイトに変貌しています。

 

IBM

アメリカのIT企業の巨人であるIBMも1996年に鳴り物入りで、

World Avenueなる電子商店街サービスを開始しています。

しかし、そのサービスは莫大な損失を出してたった1年で終了

という末路をたどっています。

 

このように、どう考えても圧倒的な有利な大企業が、

未知のフィールドにおいては、当時は誰も名前も知らなかったであろう、

スタートアップ企業に惨敗しているのです。

 

動機の違い

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これらの二項対立を、山口氏は「動機」というワードと紐づけて、

以下のように定義しています。

 

・「好奇心に導かれた起業家」(GoogleAmazon

・「指令を受けたエリート」(NTT、IBM

 

未知のフィールドにおけるイノベーションにおいては、

莫大な富を持つ「指令を受けたエリート」よりも、

何も持っていない「好奇心に導かれた起業家」の方が、

競争においては有利という結論です。

 

この結論をさらに印象づける、

以下のようなエピソードがあります。

 

アムンセンとスコットのエピソード

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帝国主義全盛期の20世紀初頭、

世界では南極点への到達が国家の領土拡大に向けて重要課題でした。

 

そして、その到達を目指す2人の男がいました。

 

1人は、ノルウェーのアムンセン。

南極点への到達が幼少期からの夢であるしがない探検家でした。

 

もう一人は、イギリスのスコット。

英国の超エリート軍人で、軍隊の中での出世が何よりの夢でした。

 

アムンセンは、犬ソリのみを使い、

探検チームに一人の負傷者を出すこともなく南極点到達に成功。

 

一方、スコットは、犬ソリ・馬ソリ・動力ソリの三段構えで臨みましたが、

南極点に到達することはできず食料も燃料も尽きて全滅してしまいます。

 

「好奇心に導かれた起業家」が、「指令を受けたエリート」に対して、

圧勝したのです。

 

また、単純に勝因は動機だけがすべてではなく、

圧勝したアムンセンの背景には、好奇心に駆動された努力がありました。

 

・幼少期から南極探検に耐えうる身体をつくる為、

真冬でもわざと窓を全開にして寝ていた。

・過去の探検の分析を緻密に行っていた。

特に、探検の最大の失敗要因を船長と隊長の不仲だと分析し、

自身で船長になる為の資格も取得していた。

・極地での技術や知識も実地で学んでいた。

 

 

一方、スコットは、

南極点到達に対しての興味はそれほどなく、

単なる軍からの指令として捉えていた。

準備は、部下に任せて技術や知識も座学で済ませていた。

 

これから大企業がすべきこと

 

ここまでの動機が組織や人にもたらす影響について、

ハーバード大学の行動心理学教授である

ディビット・マクレランド氏は社会性動機に対して、

3つを定義しています。

 

  1. 達成動機⇒設定した水準や目標を達成したいという動機
  2. 親和動機⇒他者と親密で有効な関係を築き、維持したいという動機。
  3. パワー動機⇒自分の行為や存在によって組織や社会に影響を与えたいという動機。

 

この3つの動機を先述のタイプに当てはめると、

 

「好奇心に導かれた起業家」

が「達成動機」が強いのに対して、

 

「指令を受けたエリート」

が「親和動機」や「パワー動機」が強い傾向にあるのがわかります。

 

ここからわかるのが、

大企業の組織構造においては、

「親和動機」や「パワー動機」が優先され、

「達成動機」が知らず知らずのうちに淘汰されているという事実です。

 

その為、

  • 上司に気に入られて出世したい
  • 出世して社内で影響力を持ちたい

 

という動機に駆り立てたられた「指令を受けたエリート」

が量産されてしまうのです。

 

これからの大企業においては、

「人材ポートフォリオ」を見直すことで、

「達成動機」に駆り立てられている人材の発掘と、

その人材による自由な仕事のポジションを一定数確保する。

 

ということが課題ではないでしょうか?

 

まとめ

  1. 資本や富だけではイノベーションを起こすことはできない。
  2. イノベーションの成功要因は、動機の違いである。
  3. 動機には「好奇心に導かれた起業家」「指令を受けたエリート」の2タイプがある。
  4. イノベーションには、「好奇心に導かれた起業家」が強いことが、
  5. 過去の組織や人の歴史からも実証されている。
  6. 3つの社会性動機の理論からも同じことが言える。(達成動機・親和動機・パワー動機)
  7. これからの組織は、達成動機を持った人材のシェアバランスを拡大すべき。