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30代ビジネスマンの備忘録。 マネジメントやマーケティングに関するビジネススキルや、サウナ、ウィスキー、時計などの趣味について。

【企業分析】「乃が美」から学ぶコア・コンピタンスの重要性。【高級「生」食パン】

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【企業分析】「乃が美」から学ぶコア・コンピタンスの重要性。【高級「生」食パン】

 

僕はパン派ではありますが、パン自体へのこだわりはあまりなく、

購入する際のパン屋さんやパンの種類はバラバラです。

 

しかし、ある雑誌の特集で「高級食パン」というジャンルが存在することを知りました。

一斤800~1000円の価格帯で、いつも僕が食べている食パンの十倍以上の価格帯です。

 

その「高級食パン」というジャンルの中でも、

草分け的な存在である「乃が美」という会社があります。

 

「乃が美」とは?

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大阪で2013年に創業した食パン専門店です。

「生」食パンという看板商品一本で、

今や全国に100店舗以上展開するほど急拡大しています。

 

  • パンオブザイヤー2016
  • yahoo検索大賞2017
  • yahoo検索大賞2018

 

など数多くの賞を受賞しており、

時間帯によっては売れ切れが出てしまうほどだそうです。

 

ミーハーな僕は、最寄りの店舗を調べて、

わざわざパンの価格以上の交通費をかけて実食をしてみました。

 

感想としては、今までの食パンでは味わったことのない甘みと、しっとりとした柔らかさに、

とても驚きました。僕は普通食パンを食べる時は、バターやマーガリンが必須なのですが、

この「生」食パンでは、パン自体の風味だけで十分すぎるくらい美味しくいただけました。

価格帯こそ高額ですが、その価値はあると感じました。

 

そして、この「乃が美」の経営についても、

紐解いていきたいと感じ、今回の記事でフレームワーク分析をしていきたいと思います。

 

「乃が美」の経営フレームワーク分析

  1. 「ターゲット」⇒顧客
  2. 「バリュー」⇒提供価値
  3. 「ケイパビリティ」⇒リソース・オペレーション
  4. 「収益モデル」⇒プロフィット

 

この4つの切り口から分析を行っていきます。

ターゲット

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そもそも「乃が美」社長の阪上氏が、食パンをつくろうと思ったきっかけは、

老人ホームへの慰問活動の中で、「お年寄りの楽しみは、食べることと笑うこと。やわらかいものが好きで朝食はパンが多いけど、耳は硬くて食べにくいと感じている」ことを知ったことだといいます。

 

つまり、当初のターゲットは、

「硬いものが食べられないお年寄り」という出発点からそのニーズを叶えたことで、

「食パン好きの老若男女」まで間口が広がったと言えます。

 

特定のターゲットに絞り込んだ商品開発が、

実は、その他多くの人にも受け入れられる可能性を持っているという教訓を得ることができます。

 

バリュー

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普通のパン屋にはないプレミアム感を提供している点にあります。

 

第一に店舗で販売する商品をサイズ別の「食パンのみ」に絞っていることが、

顧客に特別感を与えています。

 

第二に、普通の食パンではありえない800円という攻めの価格設定です。

当初は、「800円のパンなんか誰が買うのか」と、客にも身内にも笑われたと言われていますが、その後の売れ行きが「価値と価格のバランス」を証明しています。

 

第三に、まるで高級和菓子のような紙袋に入れるパッケージングが、

そのプレミアムのイメージに大きな効果を与えています。

 

ケイパビリティ

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「乃が美」最大のリソースは、「生」食パンの持つ「食感」だと思います。

これは、他の食パンとの圧倒的差別化です。

 

その秘密は準備期間2年の極秘ブレンドで、カナダ産の最高級小麦をはじめすべて高級食材を使い、一つでも違う材料に変えたら同じものはできないし、いつもの材料であってもたまたまコンディションが違っていたりするとうまく焼きあがらないこともあるそうです。

 

また、そのブレンドによって焼きあがった時に潰れずギリギリ立つ「腰折れ寸前」のやわらかさを実現しているといいます。

 

このような肝心なケイパビリティを、ロンドンビジネススクールのゲイリー・ハメル氏と、

ミシガン大学のCK・プラハラード氏は、「コア・コンピタンス」と呼んでいます。

 

他者にはマネできない独自性を構築することで、

それを軸に成長戦略を描くことができるというものです。

 

まさに、「乃が美」における「生」食パンの「コア・コンピタンス」は、

その「食感」であり、それを全国展開の軸足として置いています。

 

収益モデル

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看板商品である「生」食パンという商品1本で、

全国規模で販売するという驚異的なビジネスモデルです。

 

多くの店舗で売り切れが発生していることから、

原材料費のロスも非常に少ないと言えます。

 

そして、競合商品が少なく、独自性が高いゆえの高単価な価格設定が、

そこに相乗効果を加えて、収益を生み出しています。

 

また、店舗立地についても、通常パン屋の出店の多い駅前や駅ナカではなく、

あえて、住宅地の路地裏などに立地しており、

そこには「本当にうまいものがある老舗には立地が悪くても人が来る」という社長の思いがあるそうです。

 

同時に、その部分も固定費のコスト削減に大きく寄与していると言えます。

 

まとめ

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参照