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30代ビジネスマンの備忘録。 マネジメントやマーケティングに関するビジネススキルや、サウナ、ウィスキー、時計などの趣味について。

【書評】『LIFESPAN(ライフスパン)』から学ぶ長寿を実現するメソッドと最先端医療。

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【書評】『ライフスパン』から学ぶ長寿を実現するメソッドと最先端医療。

 

「長生きすることは、本当に幸せなことなのか?」

 

この問いにあなたならどう答えますか?

 

長生きすることによって、

 

  • 時代の変化を目の当たりにできる。
  • 家族や友人と過ごすことができる時間が増える。
  • 好きなことができる時間が増える。

 

だから、長生きできることは幸せだ。

 

多くの人と同じように、僕も漠然とそのようなことを考えていました。

 

しかし、実際は「長生き=幸せ」を成立させる為に、そこにはある絶対的な条件が付きます。

 

それは、「健康」であることです。

 

人生100年時代と言われる現代においては、医療技術の発達で人間を10年や20年も延命をさせることが可能になっています。

 

しかし、病院のベッドの上で患者を医療器具に縛り付け、感情や感覚を奪った状態で、ひたすら延命処置が繰り返される状態を、はたして幸せと言えるのでしょうか。

 

周囲にはそれでも生きることを望む人もいるかもしれませんが、僕はもし自分がそのような立場に置かれたら、絶対にその状況に幸せを感じることはできません。

 

では、どうすれば「健康的な長生き」が出来るのか?

 

この「健康寿命を延ばす」という大きなテーマに対する最先端の取り組みをしているのが、ハーバード大学の遺伝子学の教授であるデビッド・A・シンクレア氏です。

 

そして、今回の記事ではシンクレア氏がその研究についてまとめ、世界的なベストセラーにもなっている『ライフスパン』を参考にしながら、「健康寿命を延ばし方」について考察をしていきたいと思います。

 

シンクレア氏の過去の経験

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著者であるシンクレア氏は、オーストラリアで生まれ育っています。

大自然に囲まれた環境で、動植物に触れあいながら伸び伸びとした幼少期を過ごしました。そんな生活の中でも、大きな存在が彼の祖母でした。

 

祖母のヴェラは年老いても気持ちが若く、非常に破天荒で元気闊達な人柄で、「いい人生とは?」という著者自身の人生観にも大きな影響を与えたと語られています。

 

そんなヴェラでしたが、92歳で人生の幕を下ろすまでの10年間は、まるで抜け殻のようになってしまい見ているのも、辛い状態だったと言います。

 

その経験から、人々が人生の晩年に訪れる「死を待つだけの時間」を無くし、「生を受けている時間」を少しでも充実したものにして欲しい。

 

著者はそんな想いを抱き、まさに「人が老化していくもの」というこれまでの普遍の事実に対する挑戦とも捉えられる壮大なテーマに取り組むことを決意したのです。

 

著者の主張=「老化は病気である」

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著者の主張は、「人が老化していくもの」という一般常識を大きく覆すものです。

 

それは、「老化は病気である」という考え方です。

 

これまで、老化は誰もが避けることのできない当たり前のことだと、医学に関わるほとんどの研究者すら信じていました。

 

しかし、著者の考えを引用すると、それは対処・抑制できるものであるという捉え方もかのうになります。

 

「私たちがもついわゆる利己的な遺伝子(実際に「LINE-1配列」)と呼ばれている」は、加齢とともに自らを複製して細胞内に混乱をきたさせ、肉体が死滅していくスピードを加速させている可能性がある。」

 

今の僕らがすぐに実践できる3つのこと。

 

1.食事を減らす

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栄養失調にならない程度にカロリーを制限すれば、あらゆる生物の長寿につながるということは、様々な実験でも繰り返し実証されています。

 

「自己啓発本の父」と呼ばれる15~16世紀に生きたヴェネツィア貴族のルイジ・コルナロは、80歳で出版した『無病法』の中で、「食べることにおいても飲むことにおいても、自分の欲求を完全には満たさないことを習慣づけた」と記しています。

 

コルナロが自身で記していた記録によると、食物は毎日12オンス(340g)、飲み物はワイングラス2杯しか口にしなかったと言われています。

 

そんなコルナロは、80代でも精力的に執筆活動を行い、16世紀当時で100歳まで生きていたという資料も残っています。

 

2.運動をする

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様々な運動習慣をもつ数千人の成人を対象にした血液細胞の検査において、頻繁に運動をする人ほど、「テロメアが長い」という結果が得られています。

 

テロメアとは、特徴的な繰り返し配列をもつDNAと、様々なタンパク質からなる染色体の末端にある構造のこと指します。また、加齢とともにテロメアの長さは短くなっていくということも知られています。

 

アメリカ疾病対策センターの研究では、1日最低30分のジョギングを週に5回行う人は、座りがちな生活をする人よりもテロメアが長く、その長さは、10歳近く若い人と同等だったという結果が出ています。

 

3.厳しい環境に身を晒す

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長寿遺伝子を働かせるためには、快適とはいえない温度に身をさらすことも、1つの有効な手段だと言われています。

 

人には、余計なエネルギーを使うことなく、体温を一定に保つことができる環境温度があり、それは「熱的中性圏」と呼ばれています。

 

しかし、この範囲は非常に狭く、「熱的中性圏」を出た場合には、本能的なサバイバル状態になり、体を安定した状態に呼吸や血流に変化が起きます。

 

この変化によって、長寿細胞は必要なストレスを受け取って健康的な脂肪を増やしてくれるというメカニズムになっています。

 

このことからも、「クライオセラピー」と呼ばれるマイナス110°の超低温に体を数分間入れるストレス療法や、体を高温状態にするサウナも健康に良いとされるのは、そのような理由からです。

 

未来の医療技術に期待できること。

セノリティクスによる老化細胞除去

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「セノリティクス」と呼ばれる老化細胞除去薬が、既に開発されています。

人の身体を老化に導く老化細胞内で細胞死の誘導をすることで、老化細胞だけをピンポイントで死滅させる効果を持っているものです。

 

この薬を用いたマウス実験では、マウスの寿命が36%延びるという驚くべき結果が出ています。

 

セノリティクスをすべての人に提供する為には、効能や安全性の問題で、まだ時間はかかると言われていますが、近い未来において確実に高い効果を期待できる選択肢だと言えます。

 

これによって、生まれたての赤ん坊がワクチンでの予防接種を行うことが一般的になったように、中年を迎えた大人が老化の予防接種を行うようになる未来が来ると著者は予言しています。

 

細胞のリプログラミング

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健康寿命を延ばす為の手段として、前述した食事制限や運動、そして、老化細胞の除去に加えて、新たな選択肢が生まれています。

 

それが、細胞のプログラムを初期化してしまうという方法です。

 

例えば、一部の種類のクラゲは身体を切り刻まれてもそこから再生し、そして新たなクラゲを何匹も生むことができるのです。

 

細胞のリプログラミングとは、そのような理屈と同じになります。

 

著者の実験室では、リプログラミングのための遺伝子を体内に導入することで、マウスを若返らせる実験が行われています。

 

今後は、人間の人体においても実験を行っていき、その第1号は老化に伴う目の病気の治療になるだろうと言われています。

 

まとめ

「人の寿命を延ばす」という響きには、どこか神様のような、自然の摂理を乱すような…そんな響きすらあります。

 

しかし、これまでの人類の歴史においても、天然痘の根絶や、HIVのワクチン開発、などに成功し平均寿命を延ばし続けています。

 

そして、今現在も続いているコロナウィルスとの戦いも同様です。

 

本書で語られる医療技術と老化との戦いもまさに、同じような捉え方ができるのではないかと思います。

 

本書を通じて人類の健康寿命が100歳を上回ってくる未来は、そう遠くないことを実感したと同時に、我々がその長い期間をどう生きるのか?という問題も考えさられます。