【リーダーシップ】マッキンゼー元採用担当が語る『採用基準』。
マッキンゼー出身の著者によるビジネス本は巷に溢れています。僕の自宅の本棚にも、たくさんのマッキンゼー本が並んでいますが、そのほとんどが「ロジカルシンキング」や「フェルミ推定」といったテーマについて書かれています。
今回の記事で紹介する『採用基準』という1冊は、元マッキンゼーで10年以上採用を担当していた伊賀泰代氏が、学歴やビジネスノウハウでなく、人材採用をするにあたって本質的に重要なエッセンスをまとめた1冊になります。
本書で語られるのは、マッキンゼーに入社する為には、「ロジカルシンキング」や「フェルミ推定」を鍛えることが最も有効であるという小手先だけの考え方を否定し、マッキンゼー以外のどんな会社にも求められる人物像について触れられています。
新卒採用だけでなく、転職や社内昇進を考える人にとっても、改めて自分自身の目指すべき方向性を示してくれる1冊だと思います。
どんな企業にも共通する求められる人物像
結論からお伝えすると、それは「リーダーシップ」を持つ人物です。
多くの人が思うことは、「リーダーという役割は組織に1人か2人で十分ではないか?」ということです。
僕自身も、就職面接の時は、自分はリーダーというタイプではなく、サポート役の方が向いているな。という自己分析をしていましたし、面接でもその考え方を前提とした受け答えをしていました。
しかし、本書が主張する考え方は、リーダーの在り方は、「一部の人だけがリーダーの役割を果たせばそれで良い」という考えを根本から覆すものです。
それは、「組織に属する全員がリーダーであるべき」というものです。
著者の伊賀氏はチームやプロジェクト、それぞれの分野ごとに、責任を持つリーダーが存在するという状態を組織の理想の状態だと主張しています。
それは、外資系企業の実績からも、「全員がリーダーシップを持つ組織は、一部の人だけがリーダーシップを持つ組織より、圧倒的に高い成果を出しやすい」ということは、自明の事実です。
日本のことわざにある、「船頭多くして船山に登る」という船頭のことをリーダーとして解釈することは、そもそも間違っていて、そんな人は「自分の主張を押し通そうとする強引ない人」であるだけなのです。
そうではなく、全員が持つべきリーダーシップの意識とは、「チームの使命を達成するために、必要なことをやる」というものだと思います。
リーダーとは何をすべきか?
では、リーダーとして必要なこととは、具体的にどんなことなのか?という部分に掘り下げて考えていきたいと思います。
そこには4つのステップが存在します。
目標を掲げる
目標を掲げるとは、チームで達成すべき成果をきちんと定義することです。
しかし、組織を構成する人間というのは、打算的な生き物です。
求められる努力と、結果として得られるものがバランスしていないと感じれば、努力をやめてしまいます。
つまり、その目標は、メンバーを十分に鼓舞できるものである必要があるのです。
すぐに実現可能なものでも、あまりに壮大過ぎる夢物語でもいけません。各々のパフォーマンスを最大限発揮してやっと達成可能で、かつそれに伴う見返りが期待できる目標設定が理想だと言えます。
先頭を走る
日本企業においてこんな人がいます。名ばかり責任者という人です。
会議ではほとんど発言をせず、実務の最前線は部下が担っている。そして、何か問題が発生した時の責任だけを負う、もしくはリスクの指摘だけを行う。といったタイプです。
長距離マラソンなどに例えるとわかりやすいですが、常に先頭に立つということは、非常に負荷がかかることです。
しかし、それをせずに、リーダーが先頭に立たないということは、部下に常に後ろを気にしながら仕事をさせるということを意味します。
そのようなことをしていると、「一度、会社に持ち帰って上長の確認を得てから…」などという非効率につながります。
リーダーとは、名ばかりの責任者ではなく、行動も含めて最前線に立つことが求められるのです。
決める
「決めること」はリーダーにとって、最も求められる力の一つです。
どんなに高い分析力や思考力を持っている人でも、決めることができない人は、数多く存在するからです。
リーダーに求められる決断とは、過去ではなく未来のことです。
- 十分な検討時間がない。
- 必要な情報がそろっていない。
こんな状況の中において、リスクを取ってでも決断をするということは、リーダーにしかできないことなのです。
伝える
同質的な人間が集まる日本企業においては、「背中で語る」や「阿吽の呼吸」のようなものが、「伝える」という表現の中に潜在的に含まれる傾向があります。
しかし、全く同じ言葉を伝えたとしても、自分と全く同じ解釈をしてくれる人は二人といません。
そのような事実を理解し、言葉によるコミュニケーションを粘り強く行うことは、リーダーにとってとても重要なことです。
特にメンバーによって大切なことは、しつこいくらいに「何度も繰り返す」ということで、やっとメンバーの記憶に残るという側面があります。
まとめ
僕の勤めている会社を含め、本書で語られる「リーダーシップ」を実践できている人は、非常に少数であることを感じました。
特に、形だけの権限委譲というのは非常に多く、部下は「決めること」を許されず、しかし上司は決して先頭には立とうとしない。こんな矛盾があります。
明日からの自分自身の仕事においても、大きく修正すべき点があると認識させられた1冊です。