部下同士の対立にあえて介入しない上司の意図について考えた。
僕の勤める会社で広報担当をしている同期から聞いた上司の対応についての興味深い話です。
同期であるKは、新しい社外向けの媒体作成を担当していました。
媒体の作成にあたっては、社内のいくつかの営業部門からネタを吸い上げて、それを広報担当が編集していくという流れです。
しかし、新しい媒体となると、通常の媒体のようなフローやルーティンが整備されている訳ではなく、社内向けのコンセプトの説明会を実施するも、なかなかネタが集まらなかったようです。
そんな苦しい時期、ある部署だけはTさんという女性が中心に、積極的にアイデア提供を行ってくれて、なんとか媒体として成立するだけの情報が収集できていたといいます。
その後、彼の媒体は軌道に乗り徐々に情報を掲載してほしいという部署が増えてきました。
ところが、その急成長のタイミングで問題が発生しました。
それは、初期から積極的にアイデアを出してくれていたTさんからのクレームでした。
Tさんは初期から変わらず情熱を持って情報収集をして広報部門に提供しているのに、徐々に採用されることが少なくなり、現在では掲載すらされていないことに対する怒りをあらわにした内容だったといいます。
一方、同期のKの言い分はこうでした。
「あくまで媒体コンセプトに合った内容を選別しているだけで、Tさんのコンテンツがたまたまはまらなかっただけ。」
しかし、Tさんは納得できず今後もうKには一切協力しない。
という対立構造が生まれてしまったのです。
同僚Kが上司からアドバイスされたこと。
この状況を見ていたKの上司は、こんなことを彼に話したそうです。
「本当に今後、Tさんとのつながりを断ってしまって大丈夫なの?
彼女の存在がなかったら、君が担当する媒体が軌道に乗ることはなかったかもしれない。
でも、媒体に新しい賛同者が増えるようになったら、過去の協力者は切り捨てるという考え方は正しいだろうか?
ここで、自分(上司)が介入することでもういちどTさんの部署とやりとりを再開することは簡単だけど、あくまでそれは表面上の解決に過ぎない。
もう一度、長い目で見た時にどんな選択がベストか?Tさんと話してみたら?」
本質的な解決とは何か?
正直なところK自身もTさんとの関係性がなくなるのは、相当な痛手だったようです。
しかし、新規の賛同者が増える中で、彼らをまずは優遇しないと見放されてしまうのではないか?という恐れ。
そして、Tさんだったら多少掲載を少なくしても理解してくれるだろう。という甘さが、今回の出来事を引き起こしたそうです。
ですが、実際のTさんのリアクションがKの想定していたものと大きく異なっていたため、つい意地を張ってしまったのです。
上司はKのその状況を見抜いていたのだと思います。
だからこそ、あえて自分は介入せず、Kに考えさせるという選択をしたのだと思います。
その後、Kがとったアクションも非常に勉強になりました。
本音で話す。
子ども喧嘩ではありませんが、腹を割って話すということを大切だと思います。
KはTさんの提案を採用できなかった理由を正直に説明し謝罪したところ、そんなことは大体わかっていたという返答だったようです。
だた、Tさんが気に入らなかったのは、「コンセプトに合わないから」という理由だけで、片付けられてしまい、「それで、どうしてほしいのか?」「どこが合わないのか?」をKが何も提示してくれなかったことにあるということでした。
その対応に、これまでの関係性を否定されたという気持ちを感じたというのです。
自分から歩み寄る。
「それぞれの部署からの意図を汲み取る。」ということが、自分に欠けていた部分だとK自身が言っていました。
自分の決めたコンセプトを優先させるのではなく、それぞれのアイデアからコンセプトに合うものをどうやって汲み取れるか?ということです。
それぞれの担当者から話を聞いて内容を深めることや、文章や画像だけの表面的な部分以上に読み取る。
これら「歩み寄り」が、大切だということを教えられました。
今後の新しいアクションや約束ごとを決める。
KはTさんとの話合いを踏まえ、一方通行で提案を受け取るだけではなく、その内容についてしっかりと相互に議論をするという時間を取ることを決めたそうです。
これは決して、Tさんの部署だけでなく、他の部署とも週1回必ず行っているそうです。
そうすることで、独りよがりではなく、相互に納得性のある仕事ができるようになりつつあるといいます。
まとめ
自分にとって信念として推し進めたいこと。があることと同様に、他者にとっても同じように主張があります。
自分の主張を貫くべき時と、相手の主張を聞き入れるべき時のバランスは非常に難しいと思います。
しかし、大切なことは一度フラットな立場になり、まずは相手の主張を聞いてみる。ということが大切だと思います。
その上で、どちらの選択をすべきなのか。そして、それはなぜなのか?ということを伝えるという一連のプロセスが非常に重要だということをKからの話を聞いて感じました。