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30代ビジネスマンの備忘録。 マネジメントやマーケティングに関するビジネススキルや、サウナ、ウィスキー、時計などの趣味について。

【企業分析】無印良品から学ぶ「仕組み化」によるブランディング戦略。

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【企業分析】無印良品から学ぶ「仕組み化」によるブランディング戦略。

 

木のぬくもりを感じるシンプルで落ち着いた家具や生活雑貨を提案する無印良品の世界観は、僕自身もファンの一人です。

 

国内外で1500にも及ぶ店舗を展開しながら、ブランドとしての統一感や一貫性にブレを感じさせない一方、店ごとの個性もしっかりと感じられるバランス感覚が、無印良品の凄さだと感じています。

 

このようなブランディングは、どんな思想や考え方の上に、成り立っているのか?

そんな以前からの疑問に答えくれたのが、良品計画会長の松井忠三氏の著書である

『無印良品は、仕組みが9割』です。

 

この書籍を参考に、無印良品の「仕組み化」によるブランディング戦略について考察していきたいと思います。

 

無印良品の現在までの変遷。

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無印良品の始まりは1970年代に西友のプライベートブランドの1つとして生まれました。

 

1989年には独立した1つのブランドとして子会社化されます。

 

当時のテーマは、「アンチブランド」。ブランドの名前が付くことで、同じ商品の価格が二倍にも三倍にも膨れ上がっている状態に対してのアンチテーゼとして、あえてブランドを名付けることをせず、良いモノを安く提供することにこだわり、成長を続けていました。

 

しかし、2001年に長引く不況とディスカウントストアなどの台頭により、無印良品はこれまで一度も陥ったことのない「赤字」に転落します。

 

この「赤字」から現在に至るまでのV字回復を成し遂げたのが、本書の著者である松井氏です。

 

無印良品の転機となった「MUJIGRAM」

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「赤字転落」に陥ってしまった時の最大の課題は、社内が「経験と勘」に頼るビジネス手法に軸足を置いてしまっていたことだと松井氏は分析しています。

 

例えば、新しい店舗がオープンしたとすると、

応援に来ていたベテラン店長が「ディスプレイがおかしい」と修正の指示をします。

また、今度は別のエリアマネジャーが違う指摘をします。

こうして、現場は「経験と勘」に任せた上の人間の指示に翻弄され、夜中まで作業を余儀なくされる。という状況が続いていたといいます。

 

当然、このような状況で顧客満足につながるとは思えません。

 

そして、本当の意味で優秀な店長は全国の店舗でも数%しかおらず、その一部の店舗だけが経営の屋台骨を支えているという状況だったといいます。

 

そんな悲惨な状況を打開したのが、「すべて仕事を標準化する」をテーマに作り上げられた「MUJIGRAM」と呼ばれる長大なマニュアルです。

 

無印良品の世界観、商品、ディスプレイ、接客まですべての情報が網羅された内容なのです。

 

この「MUJIGRAM」を作成・導入したことで、リストラや早期退職、不採算店舗の撤退などを行うことなく、経営を回復軌道に導いたのです。

 

世界観を表現する3つの仕組み

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1.徹底的に顧客視点に立つ

一般的な「マニュアル」というと、本社など現場から遠いところで作成され、実際の現場ではあまり役に立たないということが通例です。

 

マニュアルを見るより、経験者に聞く方が早い。という潜在意識は誰もが持っていると思います。

 

しかし、「MUJIGRAM」は徹底して顧客視点に立ったボトムアップによる情報の吸い上げを行い、その数は年間2万件にも及ぶと言います。

 

さらに、エリアマネジャー経由で本社でも情報共有がなされ、現場の問題を全社一体となって考えるという組織風土の形成にもつながっていると言えます。

 

2.新入社員でも理解できる

本書の中には、社外秘である「MUJIGRAM」の内容も一部公開されているのですが、豊富にビジュアルが使われており非常にわかりやすい内容であることに驚きました。

 

これは、立場に関係なく会社組織で働くすべての人にとって理解が可能であるか、そしてすぐにアクションに実行できるか。という部分が考え抜かれているからだと思います。

 

松井氏は以下のように語ります。

 

マニュアルに「血を通わせる」ことが最大のカギです。

例えば、「商品を整然と並べる」と指導しても「整然と」の捉え方はまちまちです。

「MUJIGRAM」では、「タグのついている面を正面に向ける、商品の向きを揃える、ライン・間隔がそろっている」という細かなポイントが写真付きで定義されています。

 

3.アップデート

変化の激しい現代社会において、「マニュアルに完成はない」というのが「MUJIGRAM」の考え方です。

 

通常な社内マニュアルというのは数年単位で改良に着手することが一般的ですが、無印良品ではそれでは遅すぎると考えられています。

 

「マーケットの変化の半歩先を行く」ことを念頭に、リアルタイムで情報収集をしながら、全社レベルのマニュアルを月1~2回のペースでアップデートしているのです。

 

まとめ

マニュアルをベースとしたブランディング手法は、ともすると旧来の「管理型」を連想させる一面もあります。

 

しかし、無印良品が実践する方法は、あくまで上からの押さえつけではなく、個を尊重し、それを全体に波及させているという点に成功の秘訣があると思います。

 

そうすることで、ブランドに対して自分事として接することができるのだと思います。

個々の当事者意識の総和が無印良品のブランド、そして世界観を形成をしているのだと感じました。