「自爆買い」をしてしまう人と組織の心理について考察してみた。
「自爆買い」
小売業でマネジメントをしていると、向き合わざる得ない問題の一つです。
・売上目標を達成しなければならない。
・取引先との関係を維持したい。
このような日々、現実に直面する問題に対して、「自爆買い」というのは誰もが容易に思いついてしまう手段です。
そこには、基本的に自分たちが売っているものは「好きなもの」「良いと思っているもの」という大義名分もあります。
このプライドのせめぎ合いは、非常に難しいものがあります。
そのことについて、先日僕も「自爆買い」まがいのことをしてしまった反省から、少し言語化してみようと思いました。
そもそも自爆買いとは?
企業の営業活動において、従業員(パート、アルバイト、派遣社員)が自己負担で商品を購入し、売上高を上げる行為のこと。全てはノルマ達成と各店舗、営業所の販売、営業成績のために行なわれる。営業成績のために身銭を切る行為を自爆になぞらえた比喩である。
Wikipedia
過去には、日本郵便が「お年玉年賀はがき」に個人販売ノルマを設け、達成できなかった社員の給与を引き下げたり、左遷を行うなどの圧力を与えることで、多くの社員に自爆買いを促していたという一連の騒動は、社会問題にもなりました。
このように、「自爆買い」を会社組織ぐるみで強要することは、企業コンプライアンスのみならず、労働基準法にも違反した行為だと言えます。
なぜ自爆買いしてしまうのか?
そこには、間違った責任感とプライドがあると思います。
例えば、自分が絶対に売れると確信した商品の仕入れを担当したとします。取引先にも頭を下げ、無理を言って生産数も増やしてもらったとします。
しかし、結果は散々…
在庫が山積みになり、取引先に返品する訳にもいかず、売れない商品で売場を占拠する訳にもいかない。
そんな状況に陥ってしまった時、人は「どうしたら在庫を無くせるか?」ということばかりに頭が行ってしまうのです。
本来であれば、「なぜ売れなかったのか?」を考えるべきです。
- ターゲット選定が間違っていた?
- 宣伝方法が間違っていた?
- 陳列が良くなかった?
しかし、これらの根本原因を一足飛びにして、在庫を無くすことこそが自分の最大の使命であるというような間違った責任を感じてしまうのです。
さらに厄介なことに、「この商品は素晴らしい」というプライドだけは一人前に持っていることも「自爆買い」を選択してしまう原因だと思っています。
どうすれば自爆買いはなくなるのか?
「自爆買い」は関係者が多くなる程、より深刻になっていく問題だと思います。
誰かが明確な強制をする指示や行動をとらなくても、無意識の連鎖というものが発生するケースがあります。
それは、例えばみんなが買っているから自分も買わないと気まずい。というような謎の強制力です。
特に、立場の上の人間がこれをやってしまうと、下にいる部下にも当然ながら波及していきます。
マネジメントやリーダーという層は、なおさら自分の些細な行動の影響力を自覚する必要があると思っています。
まとめ
大切なのは、現実の直視です。
「自爆買い」をすることで、その場しのぎにはなっても、売上が多少なりとも上がることで、正しい現実と向き合わなくなるという側面もあります。長期的に見たら何一つ良いことはありません。
本当に自分が自社の商品に魅力を感じて購入することは素晴らしいことだと思います。
しかし、少しでも自分の気持ちにズレがあるのであれば、なぜそう感じるのか?どうすればそのギャップが埋められるのか?ということを考えることこそが、商売において最も大切なことではないかと思います。