「マーケティングトレース」ワークシートを使って<ブルーボトルコーヒー>を分析してみた。
「マーケティングトレース」とは?
ブランディングテクノロジー株式会社執行役員の黒沢友貴氏が提唱している考え方です。
ビジネスフレームワークを用いて、有名企業が実際に行うマーケティングをトレース(複写)し、そこに自分なりの考えを反映させることで、マーケター感覚を身に付ける為の技術トレーニングです。
黒沢氏のコミュニティでは、約7000人ものマーケターが集まるコミュニティとして有名です。
黒沢氏のnoteでも、多数の「マーケティングトレース」の事例が紹介されており、マーケティングに関わるビジネスマンにとっては、とても勉強になります。
僕自身、以前よりこのブログでは、三谷宏治氏の著書である「新しい経営学」で紹介されていたビジネスフレームワークを用いて企業分析の記事を書いていましたが、今回からは、黒沢氏のnoteにも無料でUPされている「マーケティングトレース」ワークシートを利用して企業分析を行ってみたいと思います。
『マーケターの筋トレワークシート』を大公開! #マーケティングトレース|黒澤 友貴/ブランディングテクノロジー
分析の対象として選んだのは、<ブルーボトルコーヒー>です。
理由はシンプルに、自分がコーヒー好きだからという理由です。
<ブルーボトルコーヒー>とは?
2010年にニューヨークに初出店し、その後2015年に日本に進出したサードウェーブコーヒーの代表格と言われるブランドです。
そもそもサードウェーブとは、コーヒーの第3の波という意味を示しています。
19世紀後半から1960年代における、インスタントコーヒーなどの普及により急速に家庭に広まったファーストウェーブ。
1960年代から2000年頃にかけてのスターバックスなどのシアトル系コーヒーに代表されるコーヒーの風味を重視するセカンドウェーブ。
コーヒー本来の価値を重視する第3のコーヒーの流行を指す。
つまり、コーヒーを単なる生活必需品として捉えるのではなく、ワインのような芸術性を兼ね備えた高品質な食品として提供することを特徴とし、コーヒーの栽培管理、収穫、生産処理、選別そして品質管理に至る全ての工程において品質管理が適正に行われており、欠点豆の混入が非常に少なく、個性を持った商品に人気が集まるといった点で、地ビールと類似した特色を持っていると言えます。
(参照:Wikipedia)
<ブルーボトルコーヒー>のマーケティングトレース
理念/ビジョン
「おいしいコーヒーをより多くの人に届ける」
コーヒーの本質的な価値を求めるサードウェーブの在り方がそのまま反映されたビジョンであると言えます。
フレームワーク分析
①外部環境分析(PEST分析)
<ブルーボトルコーヒー>を取り巻く社会環境を考察していきます。
経済的な部分
近年日本ではコーヒーの輸入量が右肩上がりで推移しており、2018⇒2019年の一年間で年率150%の推移をしています。
そこからも、日本におけるコーヒーの市場の成長性を見て取ることができます。
社会的な部分
サードウェーブに代表される本質的な味を求める文化は、かねてより日本の「丸山珈琲」や「猿田彦珈琲」などが注目を集めており、一般化はしていないものの一部のコアのファンを取り込んでいるという側面があります。
技術的な部分
SNSなどをはじめとした個人メディアが急激に発達、成熟しています。
マスメディア主体の時代には、ドトールに代表される「価格の安さ」やスターバックスに代表される「空間のおしゃれさ」などの一目でわかりやすく、注目を集めていました。
しかし、個人メディアにおいては、口コミによるより「こだわりの味」や「ニッチな好み」など、これまでのメディアで伝えきれていなかった要素を拡散することができるので、これは、サードウェーブコーヒーの在り方にとって非常に追い風であると言えます。
上記の考察からも、<ブルーボトルコーヒー>が世界の中でも早い段階で、日本進出を決定した理由が理解できます。
②競合の定義(5Forces分析)
競合の考え方については、2つのパターンが想定できます。
1つは、同じコーヒーを提供する業界内の競合
もう一つは、本質を求めるというサードウェーブと同じ価値を、コーヒーというジャンル以外で提供している価値競合に分かれます。
③ターゲティング/重点顧客
ブルーボトルコーヒーが戦略的に狙っている顧客について考察していきます。
年齢/性別
性別は問わず、時間や経済的にゆとりのある20~30代の比較的若い層を狙っていると言えます。その理由は、SNSを利用した購買行動に一番直結しやすい層であるとことや、新しいものに対する受容度も高いと考えられるからです。
さらに、この顧客層の行動特性や嗜好性を紐解いていくと以下のようなことが言えると思います。
行動特性
- 好きなモノやコトに没頭する
- 一人や友人との時間を大切にする
- おしゃれであると思われたい。
嗜好性
- こだわりが強い
- 最先端のものを好む
- 価格よりも価値に重点を置く
④ポジショニング
ここまでの考察からブルーボトルコーヒーが業界の中でどのようなポジションを獲得しているかについて、2軸から考えていきたいと思います。
1つは、ブランドイメージです。「都会的」or「庶民的」という対比ができます。
海外初でブランドデザインや店舗内装も洗練されたブルーボトルコーヒーは、スターバックスコーヒーと同様に都会的と言えます。
一方、ロードサイドに多くの出店をしているコメダ珈琲や、観光地などに出店している日本独自のスペシャリティ珈琲店は、どちらかと言えば庶民的という分類ができると
言えます。
もう一つは、価格です。「低価格」or「高価格」という対比ができます。
コーヒー1杯を手軽に利用できることを魅力としているドトールやコメダ珈琲などは、「低価格」に分類されます。
一方、ブルーボトルコーヒーや丸山珈琲においては、同じ1杯でも食事ができてしまうほどの価格設定になっており「高価格」に分類されます。
両者に背景には、1杯のコーヒーに対する手間暇が関係しています。
全自動のマシンで淹れるコーヒーと、専門的な技術を持った人間がドリップするのでは、味に大きな違いが生まれ、それが価格にもつながっていると言えます。
⑤⑥マーケティングミックスとその成功要因
ここでさらに、ブルーボトルコーヒーを構成する要素をマーティングの4Pに分解して考察したいと思います。
- Product…味に対する強いこだわり
- Price…高価格
- Place…都心近郊の住宅街
- Promotion…パブリシティ中心
ここから言えるのは、あえて集客活動を積極的に行わないコーヒーチェーンらしからぬ姿勢です。
あくまで、美味しいコーヒーを飲みたい人が、わざわざ調べて、その為に赴き、高い料金を支払って飲みに行く。というアナログな経営スタイルに寄っていることがわかります。
そこには、海外の最新コーヒーショップなのに一等地の立地でもなければ、目立った宣伝活動も行わないというギャップから生まれる新鮮さや、不便だからこそ感じる愛着のような感情を呼び起こしているとも言えます。
⑦もし自分がCMOだったら…
ブルーボトルコーヒーは、コーヒーの味そのものに魅力があることは否定しませんが、それ以上に人を引き付けるものは、「店を利用していること」それ自体がステータスになるという要素があると感じます。
そして、その感情をさらに喚起させる要素として「会員制」という制度は有効だと思います。
限られたコミュニティをつくることは、顧客にとって外側に対しては「ステータス」という要素の満足をさらに満たし、内側に対しては「こだわりの共有」という要素の満足を満たすことができます。
そうすることで、単価や来店頻度をさらに引き上げられるのでは?と予想します。
感想
初めてガチンコで、ワークシートを使用したマーケティングトレースに挑戦しましたが、普段のブログ記事の3倍くらいの時間がかかってしまいました。
しかし、フレームに沿って調べ、考えることは、非常に思考の体操になるな。
と感じました。このストレッチ感を忘れてはいけないと思います。
来週からも、このワークシートを利用し様々なマーケティング分析を行っていきたいと思います。