キーエンスの高収益ビジネスモデルをマーケティングトレースしてみた。
「キーエンス」
事業内容は知らなくても、一度は会社名を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
経済紙の年収トップランキングなどでは常に上位に取り上げられている一方、激務というイメージも少なくありません。
しかし、会社の知名度に比べて実際にキーエンスが行っているビジネスモデルについての認知度は低いと感じます。
そこで、今回の記事ではキーエンスの何が?どのようにすごいのか?という点をマーケティングトレースのフレームワークを用いて紐解いていきたいと思います。
キーエンスとは?
会社概要
社名:株式会社キーエンス
設立:1974年5月27日
資本金:306億3,754万円
株式上場:東京証券取引所市場第一部上場
代表者:代表取締役社長 中田 有
連結従業員数:8,419名(2020年3月現在)
事業内容
1974年に設立したキーエンスは、FA(ファクトリー・オートメーション)用センサを中心に測定器や画像処理機器の企画・設計・開発・生産を行っています。設立から常に生産現場の声に耳を傾け、付加価値の高い商品で「ものづくり」を支え続けきました。
自動車や半導体、電子・電気機器、通信、機械、科学、薬品、食品など業界に捉われることなく事業を展開し、現在の取引先は全世界で25万社以上。キーエンスは「ものづくり」に携わるすべての企業に向け、生産性や品質の向上につながるソリューションをご提案しています。
キーエンスのマーケティングトレース
外部環境分析
キーエンスの事業内容は世界的な情勢の中で、長期的な成長を見込める市場環境にいます。
その一番の理由が、日本をはじめとする世界の労働人口減少です。
また、労働力が安い途上国の人的資源に頼ることも頭打ちになってきています。
そのような労働人口が減少し人件費が高騰する中で、過去の労働集約的な生産方法では、多くの企業にとってビジネスが成立しなくなってきています。
その中で、必要になってくるのが工場の自動化です。
人手が足りないという問題に対して、より安い労働力を求めて足りない穴をかき集めてくるのではなく、機械に代替えするという考え方です。
限りある人的資源は知的労働にシフトし、機械が人に変わって肉体的労働を行うという流れは、世界的な潮流です。
そして、この工場自動化に欠かせない精密機器を販売しているのが、キーエンスなのです。
短期的には、米中摩擦などの政治的要因が、業績にマイナス影響を与えている部分はありますが、将来的にも需要は増え続ける市場であることは間違いありません。
競合分析
業界競合としては、キーエンスと同じく工場自動化の精密機器を扱う企業が挙げられます。
一方、業界競合との比較の中でも、キーエンスはコンサルティング営業による付加価値を圧倒的に重視して利益の確保をしています。
その点からも、ラグジュアリーという付加価値に紐づけられるホテルや自動車メーカー、ファッションブランドなどが、価値競合として挙げられます。
ターゲティング
キーエンスの基本的な顧客は、BtoB企業です。
前述したように工場での生産の自動化を目指している企業は、全世界を通してターゲットとなりえます。
ポジショニング
コンサルティング営業によって顧客ニーズを汲み取ることで開発された「世界発」「世界一」「世界最小」といったタグラインのついた商品群による圧倒的付加価値と、その付加価値による独自のプライシングによって、業界内でも独自のポジショニングを築いています。
マーケティングミックス
キーエンスのマーケティングミックスは、非常にメリハリが効いていると言えます。
付加価値をつけたプロダクトとコンサルティング営業という強みにより、本来であれば避けては通れない値引きや宣伝/広告といったコストを徹底的に排除しているのです。
成功要因の整理
自分がその企業のCMOだったら
精密機器というキーエンスが提案するプロダクトの需要を新しい市場から生み出すのは難しい側面があります。
しかし、どんなキーエンスの強みとしているコンサルティング営業や営業ノウハウは、業界を限定することなく、汎用的に活かせるものです。
このノウハウをセミナーや教材のような形で、全く異なる業種に対して販売するというアプローチは、キーエンスにとって新たな市場の開拓につながる可能性を秘めていると感じます。
感想
キーエンスのマーケティングトレースをしてみた感想としては、その商品力や提案力もさることながら、その付加価値を生み出す組織カルチャーが仕組みとして深く根付いている点です。
マーケティング手法と同様に、組織のどの部分にも一切の無駄がなく、全てが合理的に働いている点は、もはや一つの芸術作品のようにも感じました。