BtoC企業の現場で働く僕にとってクレーム対応は、日常業務の一つと言っても差し支えないほど、これまで多くのクレームを経験してきました。
入社して数年後、初めてクレーム対応をしたときには、緊張しすぎてぎこちない対応と余計なことをお客さんに言ってしまったことで、小さな火種から大炎上させてしまったこともあります。
そのような経験から、どうすればお客さんの怒りを最小限に抑えて、鎮火できるか、ということを考えながら数をこなしていくうちに、自分なりの対応術が身についてきたと感じているので、その対応方法を言語化していきたいと思います。
目次
すべてに共通する対応のポイント
否定の接続詞はNG。
やってしまうと、ほぼ必ずクレームが炎上しまうのがこれです。
クレーマーの主張に対し、「でも…」「ですが…」「しかし…」という否定を意味する接続詞で返してしまうパターンです。
なぜ、これがNGかというと、何かしたらに文句をつけて怒っているクレーマーには、どんな論理的な説明も、正論な弁明も、沸きあがっている頭には全く入ってこないからです。
冷静な判断ができない状態のクレーマーは、対応の内容ではなく、相手が自分に対して肯定的なスタンスなのか、否定的なスタンスなのか、しか見えていません。
そのような相手に対して、主張を退けるような言葉は、まさに火に油なのです。
僕の経験上、普段はどんなに常識的で冷静であろう人でも、入口から否定でかかってしまうと100%その後の対応は困難を極めます。
とりあえず聴くことに集中。
肯定も否定もしない。
とにかく、相手がしゃべり疲れるまでひたすら聴き続けること。
なぜ、そんな周り道をするのか?という理由は、相手をクールダウンさせる為です。
クレーム対応の中で、100%否定語を使わないことや、店側の主張を一切しないということはあり得ません。
しかし、タイミングがあります。それが、一通り相手が主張をしゃべり倒して落ち着いたタイミングです。その時、ようやく正確な情報を正しく伝えることができると思います。
また、「聞く」ではなく「聴く」という字を使ったことにも意味があって、傾聴という言葉にあるように、「聴く」ということは、普通に「聞く」よりも相手に寄り添うことを意味しています。
実際の対応の場面でも、耳を相手に傾けるような動作をすることで、より真剣にこちらが受け止めているという印象を与えることができます。
僕の過去の経験で最もクレーム対応が上手かった上司は、クレーマーから話を聴く時、手を耳に当てながら、何度もうなずきながら聴くという動作をしていました。
第3者からすると、あからさま過ぎて、パフォーマンスが過ぎるように思えるかもしれませんが、そうすることでどんなクレーマーでも相手の気持ちを落ち着かせてしまっていました。
共感で真意を探る。
クレーム対応の肝は、クレーマーである相手がどうしてほしいのか?という真意を押さえて、それを満たす対応をするということが、解決のカギになります。
例えば、同じ商品不良というクレームでも、相手の真意は人によって異なります。
- ある人は、正常な状態の商品と交換してほしいと思っている。
- ある人は、商品に対する不信感から返金を望んでいる。
- ある人は、具体的な今後の対応策を示してもらうことを望んでいる。
その真意を探るには、ただ聴いているだけでは、十分につかめません。
なので、共感という相手を肯定する姿勢を保ちながら、どこに真意があるのか?という探りを入れるのです。
多くの場合は、自分の共感に対する相手のリアクションでだいたいつかめてきます。
自分が共感を示したどの部分に対してのリアクションが大きくなっているかという点を見るのです。
僕の経験上、真意をつくような共感を示すことができた場合には、その点に関して相手がめちゃくちゃしゃべってくれます。あぁ、そこに関心があるんだな。ということがわかります。
クレームの種類をざっくり分けると…
以下の図のように説明ができると思います。
・ホワイト
⇒誠意ある対応をすれば解決する常識的なクレーム。
Ex:商品に不備があった⇒交換か返金の対応を望んでいる。
・ブラック
⇒悪意しかない、犯罪要素の強いクレーム。
Ex:なんの問題もない商品を不良品扱い⇒多額の金銭を要求。
・グレー
⇒店側の不備に付け込んで、過剰な要求をしてくる最も厄介なクレーム。
Ex:商品に不備があった⇒商品代金に加えて慰謝料や交通費等を請求。
それぞれの対応方法としては、
ホワイトクレームに対しては、傾聴&共感でほぼ解決できます。
ブラッククレームに対しては、明らかに社会通念上間違った要求である為、毅然とした態度で要求を拒否し、場合によっては警察の介入も厭いません。
グレークレームに対しては、一歩間違えると大事故になりかねませんので、対応の力量が求められる内容になります。最難度のクレームです。
「最難度」グレーなクレームの対応テクニック
大前提として、グレーなクレームをつけてくる相手は、クレーム慣れたテクニシャンであるということです。店側がどういった対応で出てくるかわかっていて、そこに付け込んで過剰な要求をしてくるという場合が多いです。
だまる。
クレーム慣れした相手の常套手段として、プレッシャーをかけてくる。
という方法があります。「時間がない!」「今すぐ判断しろ!」「なんとか言え!」そのような言葉をまくしたて、店側の判断を鈍らせようとします。
そんな時の対応方法としては、「だまる」ということが有効です。
相手が黙ってしまうというのは、このような対応の中では、不気味なものです。
だまって間をつくることで、相手に対して逆にプレッシャーを与えるのです。
そのような間ができることで、対応する側にも冷静な判断を下す時間が生まれます。
相手が少しひるんだでこちらがマウントをとった状態であれば、一度クレーム案件を預かって正しい判断を行う。という休戦に持っていくことができます。
困る。
「ネットで拡散するぞ!」「マスコミにタレコミするぞ!」といった脅しも経験したことがあります。
そのように脅すことで、クレーマー側は過剰要求を受け入れさせようとしてきます。
しかし、実際問題として、こちらが一定の誠意ある対応している上では、1クレーマーのネットでの影響力がどれほどあるでしょうか?そして、マスコミでリークしたところで、マスコミはその情報をどう扱うでしょうか?よほどこちらに非がある場合や、よほど強烈な影響力を持つ人物でない限り、知れています。
このような場合は、こちらが動揺してしまうと相手の思うつぼなので、どうぞご自由に。という姿勢を「困る」という態度で示すことが有効です。
なぜなら、クレーマーが情報を発信する自由とクレームの対応は、全く別次元の問題だからです。
こちらが、困った顔をして否定も肯定もしないと、それ以上は何も出てこなくなります。
名前と連絡先を聞く。
グレーなクレーマーは、個人情報を知られることを非常に恐れています。
自分がやましいことをしている自覚があるということはもちろんですが、チェーンの店舗などでは自分の情報が共有されてしまうことで、常套手段が通用しなくなってしまうからです。
僕の知っている限りでは、クレーム慣れしている人間であっても、大体過剰要求の内容やパターンの数はほとんど1つか2つです。(中には、プロクレーマーもいますが…)
おそらく、はじめはホワイトなクレームで始まったものが、店側の過剰な対応によって味を占め、グレークレーマーに変貌するパターンを身に付けてしまったのではないかと推測しています。
なので、グレーなクレームを防ぐ方法としては、そのような人間を生まないために、クレームに対する過剰なサービス対応をしすぎないというのも大切かと思ったりします。
まとめ
- クレーム対応のステップは、「脱否定語」⇒「傾聴」⇒「共感」。
- クレームの種類は、「ホワイト」「ブラック」「グレー」の3種類。
- グレークレーム対応は、応用が必要。