女性のキャリアを阻むガラスの天井。
結婚、出産、育児などのライフイベントの変化が考慮され、
昇進や昇格のチャンスが与えられない会社の人事状況を指して、
「ガラスの天井」という言葉が使われます。
実際に、僕の会社でも能力的には十分昇格するに値するスキルがありながら、
長年ポジションを上げられないでいる女性の先輩がいます。
彼女は、夫婦共働きで小さなお子さんが二人います。
そして、毎年のようにキャリアアップの試験も受けていますが、
ギリギリのところでいつも不合格となっています。
そして、彼女のところには数年ごとに入れ替わりで新米上司が配属され、
彼らの教育係のようなポジションにもなっています。
会社としては、若き上司を育てることが将来の投資である側面もわかります。
しかし一方で、子育てや年齢の問題もありながらも、上昇志向を持っていて、能力やスキルがある人材を、ずっと同じポジションにくすぶらせている状況は、普段から近くで見ていても非常に理解に苦しみます。
男性のキャリアを閉ざすガラスの地下室。
男性社員が皆、順風満帆に出世をしていくかと言えば、そんなこともありません。
企業が大きくなればなるほど、出世レースをはずれた人間は、
業務上で事故や病気のリスクのある危険な仕事や、
精神的に負荷のかかる部署、長時間労働を強いられる部署への配置を命じられます。
仕事と報酬が見合っているかは度外視され、
「会社からお金をもらえているだけありがたいと思いなさい。」
と言わんばかりの強引な人事がまかり通っています。
そして、彼らが定年まで押し込められるそのような劣悪な環境の職場を
俗に「ガラスの地下室」と言います。
いま企業で評価されている人。
では、どんな人が順調にキャリアアップを果たしているのでしょうか。
すべての会社に当てはまるわけではありませんが、
日本の平均をとると以下のような人材が当てはまるのではないでしょうか。
- 残業はウェルカム。
- 努力と根性で乗り切る。
- 人当たりが良い。
つまり、会社にとって都合の良いイエスマンということです。
僕の会社でも、「多様性」「ダイバーシティ」というワードを上層部がしきりに発しながらも、実際の人事や現場の評価は、上記のような人々の有利が働いているのが実情です。
現場レベルで求められる人材が変わっていなければ、
どれだけテクノロジーが発達しても昭和の時代と何も変わっていないのと同じです。
日本の経済が衰退に向かっているのは、当然の結果ですよね。
これからの会社に必要なこと
誰からも支持される圧倒的な人気製品や、
誰もが望む最高のサービス。
そんなものはあり得ない時代になりました。
つまり、イエスマンに人気製品・サービスの営業や販売をひたすらさせていれば良い。
という時代ではないのです。
人の好みや求めるものが細分化されていく中で、
人材が画一化されているのは、完全に時代への逆行です。
イエスマンだけの思考や行動によって、会社が良い方向に進むはずがありません。
だから、これからの会社に必要なのは、「多様な価値観」だと思います。
会社がすべきこと
評価基準の見直し
精神論や感覚に頼ったファジーな評価ではなく、
例えばマネージャー職であれば、以下の3点のように具体化させる必要があると思います。
- 組織目標の結果責任
- 部下の育成評価
- メンバーの社内評価向上
あくまで生産性に主軸を置いた評価にすることで、
上司の顔色をうかがうような「ムダな努力」が評価されることをなくさないといけないと思います。
リモートワークの推進
会社の仕事は、わざわざオフィスに出勤してやる必要があるものばかりではありません。
実際に、育児の関係などでオフィスに出勤することは難しくても、提供できるリソースを持っている人はたくさんいます。
また、あえてオフィスに出勤しないで、外で伸び伸びと仕事をすることがクリエイティブにつながるというタイプの人もいます。
これらの人々が持つ能力を最大限に活用するという意味でも、
今後人材が不足していく社会では、リモートワークは必須な働き方だと思います。
個人や家庭ですべきこと
夫婦間の対話
共働きをしている家庭の話になってしまいますが、
夫婦で働き方についてしっかりと対話をするということは非常に大切です。
同じ職場で働いていない限りは、なかなかお互いの仕事の様子というのは見えてこないものです。
- 将来的にどう働いていきたいか。
- いまの仕事の満足度は?
- 仕事をする上で、家族のフォローが必要なことは?
これらのことはなかなか見過ごされがちですが、
会社の制度が変わらなかったとしても、夫婦間の調整で今より働きやすくなるというこはあると思います。
例えば、キャリアアップを目指す妻に対して、
夫が仕事の調整をして、妻の勉強時間を週1日は捻出する。等です。
リカレント教育
産休や育休もしくは病気などで仕事から一定期間離れた場合、
いまの日本では、もともとのポジションに戻って仕事を再開するということが、
困難な場合が多くあります。
リカレント教育とは、社会人の学び直しとして大学や大学院で「履修証明」を発行するプログラムです。
つまり、社会から離れた期間を、ネガティブに捉えるのではなく、
再度勉強しなおす期間と位置付けて、ポジティブに新しいキャリアのきっかけにできるような場もあります。
海外では、社会人が一度仕事を離脱して勉強をし直すというのは一般的ですが、
日本ではまだまだ浸透していません。
しかし、今後さらに一般化が考えらえますし、
そのような人材が求められるようにもなってくると思います。
考察
多様性を重視した働き方は、
女性はもちろんですが、
これまでチャンスが巡ってこなかった男性にとっても、
実現させるべきことだと思います。
一方で、多くの人が自由な選択をして仕事ができるようになるということは、
その反面、個人に対する責任も大きくなるということが言えます。
会社の言いなり状態では、何かミスや失敗をしても、
会社がそれを命じた責任がありますから、個人の責任は少なく済みます。
しかし、今後、リモートワークをはじめとして、
自分のすべき仕事を、自分で割り振った時間の中で、会社とコミットした結果を出す。
ということが発生してくると思います。
「自由に働きたい」という権利の主張だけでなく、
「個人の責任を果たす」という新たな課題も認識しなければいけません。
これまでとは別の働く上での課題とも向き合いながら、
頑張っていかなくてはいけない時代だと思います。