【ファシリテーション】場を掌握するパラレル思考という考え方。
【ファシリテーション】場を掌握するパラレル思考という考え方。
ムダな会議に使われる時間の損失は年間15億円。
(https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1901/31/news026.html)
この数字は、現場の最前線で働く従業員からしたら衝撃的な数字ですよね。
末端の従業員が、汗をかいて働いて生み出した利益が、
上層部のオジサン達のムダな会議で削られている。
特に従業員数が多い大企業ほど、会議の数と時間当たりの損失額は、
比例して膨らんでいるのです。
僕自身も、会議は新しいアイデアを生みだす創造的な場として、
必要なものだと思います。
しかし、以下のようなものはいらないと思います。
- 集まることだけに意味を持つ会議
- 報告だけの会議
- 全員に発言権がない会議
では、有益な会議とはどのようなものなのでしょうか?
今回の記事では、「有益な会議」の定義。そして、「具体的な流れ」について
イタリア人コンサルタントのエドワード・デ・ボーノ氏著の『Six Thinking Hats』を参考にしながら考えていきたいと思います。
「有益な会議」と「パラレル思考」
「有益な会議」とは、どんな会議のことを指すのでしょうか?
それには、パラレル思考という考え方が関係してきます。
パラレルとは、日本語で平行という意味です。
「パラレルに考えられていない」ということは、
例えば、4人家族が自分たちの家について、別々の4面からその様子を
語っているようなものです。
- 父⇒「とても大きな玄関の扉があるんだ。」
- 母⇒「裏庭は大きな木があるの。」
- 子①⇒「ここからは子ども部屋の窓が見えるよ。」
- 子②⇒「キッチンに入れる勝手口があるよ。」
全員の目線がバラバラです。
まるで、会社の会議でそれぞれの部署の参加者が自分の担当に関する主張しかしない、
という様相ととても似ていますよね。
つまり、「パラレルに考える」ということは、
全員で目線を合わせて考えるということを指します。
目線合わせのポイント
著者は以下のことについて、ごちゃまぜにしてはいけないということを警告しています。
- 「感情」
- 「情報」
- 「論理」
- 「期待」
- 「創造性」
会議の参加者は、いま会議の議題は①~⑥の項目のどれについて話し合われているのか?ということを理解した上で、目線を合わせてその項目に沿った発言をしていかなければ、相互理解は生まれません。
6つの帽子の特徴
人は6つの側面の思考を持っていると言われています。
人によって持っているものが違うというものではなく、
皆がそれぞれ違ったバランスで持っているものになります。
そして、その状況や場面によって思考を切り替えているのです。
これを、本書の著者は「帽子をかぶる」という表現を使っています。
それぞれの帽子の特徴を見ていきたいと思います。
- 白…中立・客観⇒事実と数値データ
- 赤…情熱・感情⇒感情的
- 黒…真面目・思慮深い⇒警戒と注意
- 黄…明るい・積極的⇒肯定的・支援
- 緑…成長⇒創造性
- 青…空・冷静⇒俯瞰的な目線・全体感
有益な会議の流れ
6つの帽子の特徴は理解できました。
しかし、人がその6つの側面をどんな場面で、どう使っていくのか?
会議の場面で、実践していく為のステップについて解説していきます。
- 会議で決めるべきことを明確にする。⇒「青の帽子」で全体感を捉える。
- 自由な意見を出し合う⇒「赤い帽子」で情熱的に。
- テーマに関するあらゆる情報を出し合う。⇒「白い帽子」で事実・数値ベースで。
- 計画や提案を引き出す。⇒「黄色の帽子」で積極的に。
- 新しいコンセプトを考える。⇒「緑の帽子」で創造的に。
- 具体的に実現できそうな選択肢を評価。⇒「黄色の帽子」で肯定的に。
- 使いものにならない提案などを吟味する。⇒「黒い帽子」で警戒心を持って。
- 全体的な地図の完成予想図を描き、進むルートの検討を行う。⇒「青の帽子」で俯瞰的に。
- 進むルートに対して意見を出し合う。⇒「赤の帽子」で情熱的に。
- 進むルートに対して精査する。⇒「黄色の帽子」と「黒の帽子」で大胆かつ慎重に検討。
- 実現に向けた戦略を確定。⇒「青の帽子」で全体的に。
考察
会議のフェーズにおける思考の切り替えの重要性というフレームは、
とても理解できました。
しかし、それ以上にそれぞれのフェーズにおいて、
「全員に同じ帽子をかぶってもらう」為、
- そこに向けた共通認識を根付かせることや、
- 場を取り仕切る能力
というのは、一朝一夕では身につかないものだと思いました。
多くの会社で会議がフレーム自体は確立されているものの、
うまく機能していないのは、そのような参加者の連帯感とファシリテーターの能力の問題だと感じます。