同じミスを繰り返すD君
マネージャーの立場で現場をマネジメントする時に、
最も気をつかわなくてはいけないのが、極の立場にいる部下です。
極とは両端あり、長期間在籍しているベテランと、
入社して間もない新入社員です。
なぜ、そう言えるのかというと、
僕の考えとしても、一般的に見ても、
- ベテラン⇒考えや思考が硬直している。
- 新入社員⇒考えや思考が定まっていない。
というケースがほとんどです。
(人それぞれ色々な思考パターンがあるので、一概には言えませんが…)
しかし、世の中のスピード感についていくという意味で、
ベテランの凝り固まった思考を解きほぐすこと。
そして、社会人としての基本、会社の仕組みや向かうべき方向性を定着させるという意味で、新入社員に理解してもらうこと。
これらには両方とも、一定の「時間」と「労力」が必要とされます。
僕が担当する部署には、3人の新入社員がいます。
そのうち一人のD君には、「時間」と「労力」の両面において、
非常に苦労させられました。
一言でいうと、「同じミスを何度も繰り返す」からです。
なぜD君は同じミスを何度も繰り返すのか?
彼は決して頭の悪い人間ではありませんでした。
大学の学歴もそこそこです。
そんな彼の最大の長所でもあり、短所でもあるのが、
「好き嫌いが激しすぎる」ということです。
彼は自分の好きな仕事は、
時間を忘れるほど真剣に取り組んでくれていました。
特に、商品レイアウトやプレゼンテーションの仕事が大好きでした。
しかし、嫌いな仕事に対しては、
見向きもせず、注意をされてもすぐに忘れてしまうのです。
いわゆる事務系の書類や伝票作成などの仕事は大嫌いといった具合でした。
つまり、同じミスをする根底には、
「これは自分がやるべき仕事ではない。」
という勝手な決めつけが潜在意識の中にあることが原因だと思いました。
当然ですが、新入社員という立場である以上、周囲の先輩社員たちの目線は、
良い面は、よほどのことがない限りは注目されず、
悪い面は、ちょっとしたことでもとても目立ってしまいます。
そうして、D君は頑張っても評価されない、
ある意味、残念なポジションを自分自身で築きあげてしまったのです。
D君をどう育成するか?
新入社員の中でも、ダントツで評判の悪くなってしまったD君に対して、
僕自身も相当な危機感を覚えました。
仕事に対するモチベーションが下がり切ってしまって、
退職してしまうのではないか、という危機感です。
そこで、僕自身のD君に対する今後の関わり方を固めると同時に、
彼自身にも変えてもらうべき部分と、変えない部分の線引きを
お互いにしなくてはいけないと思いました。
そこで、彼と話をして伝えたのは以下の3つのコトです。
好きは尊重する
D君は、今仕事の中でも最も熱心に取り組んでいる
商品のレイアウトやプレンテーションにかなりのこだわりがあります。
そして、今後のキャリアとしてもその部分の専門性を高めていきたいと
いうことでした。
将来的には、独立も考えているそうです。
そんな彼の「好き」に対しては、
全力で応援をしたいと思いました。
僕自身も彼の仕事の成果はこまめにチェックし、評価をしていくと同時に、
D君向きの仕事があれば積極的に任せていくことを約束しました。
顧客目線で全体感を考える
一方、一つの事に傾倒しすぎて他の部分が見えなくなってしまう危険性も、
示唆しました。
自分たちは、小売業である以上、
単純に「商品や陳列を魅力的にみせる」ということがすべてではありません。
その前後のプロセスとして、
前には商品を仕入れるまでの段階、
そして、後には購入まで至る段階があります。
プレゼンテーションは、その購買プロセスの一部でしかありません。
仮にどんなにプレゼンテーションが優れていても、
・顧客の望む商品が置いてなかったら?
・商品が在庫欠品していたら?
・価格が適切ではなかったら?
これらは、最終的に購買まで至りません。
あくまで、顧客目線で購買に至るまでの全体プロセスを理解した上、
プレゼンテーションもした方が、より良いもの見せ方ができるはず。
そして、顧客目線の全体把握のためには、
今、D君が疎かにしてしまっている業務にヒントが詰まっているはず。
と、そんなことを伝えました。
苦手なものを最優先事項にする
人間誰でも、好きなことは苦も無く取り掛かることができます。
だから、嫌いなことはどうしても後回しにしてしまい、
結果的に忘れてしまう。
D君は完全にこの蟻地獄にはまっていました。
その蟻地獄から抜け出すためには、
放置していたら忘れてしまうような嫌いな仕事は失敗してでも真っ先にやる。
という習慣付けが必要だと思います。
自分の中で、嫌いな仕事を最優先事項に位置付けることは、
長期的には好きなことを伸ばすことにもつながるはずだと。伝えました。
D君のその後
「仕事の全体感」
つまり、どの仕事がどの仕事とつながっているのか?
という理解の必要性は、彼なりに納得してくれたと思っています。
嫌いな仕事に取り組むスピード感も少しずつ上がっています。
しかし、まだ「本当はやりたくないけど仕方なくやってる」感が、
拭いきれないのか、仕事の精度はまだまだ微妙なところです。
第1ステップの「忘れない」「放置しない」という点については、
クリアしてきています。
第2ステップの「精度を高める」という部分を、
中期的に見ていかないといけません。
そして、彼の長期的なキャリア目標に関しては、
引き続き応援していきたいと思っています。