偉大な父親
カナダの経営者であるキングスレイ・ウォード著の『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』は、父として息子に半生をかけて送り続けた手紙を書籍化したものです。
- 作者:G.キングスレイ ウォード,G.Kingsley Ward
- 発売日: 1994/04/01
- メディア: 文庫
父であるウォードは、息子が大学に入学してから、社会に出て、そして自分と同じ経営者になるまでに、その人生の節目ふしめで、30通に渡る手紙を残しています。
その内容は、あらゆるビジネスパーソンに応用できる本質的なもので、全世界でミリオンセラーを記録しました。
そんな本書の中でも、著者が一貫して息子に語っていたことは、「挑戦する」ということの大切さです。
目次
なぜ、挑戦が大切なのか?
著者は息子が人生の新たなステージに足を踏み入れる度に、繰り返し挑戦することについて説いています。
人生はあっという間に過ぎていきます。
日々の些末な出来事に追われて、貴重な時間を浪費してしまうことは、人生において一番もったいないことです。
多くの挑戦をあきらめた人にはこんなことが言えるかもしれません。
「自分は機会に恵まれなかった」と人生を素通りしていく。
しかし、それは受けて立つ勇気がなかっただけ。
だからこそ、挑戦には勇気が必要なことを自覚し、
挑戦を繰り返すことで自分の感度を高め、視野を広げることができます。
挑戦はタイミングである。
本書の中では、シェイクスピアの以下の一節が引用されています。
人の世には潮があって
満潮に乗り出せば 幸運をもたらし
無視すれば その航海はすべて
浅瀬に乗りあげ不幸に終わる
この一節は、挑戦するにあたっては「とりあえず何でもいいからやってみればよい」というワケではない。という警告の意味が含まれています。
あくまで、慎重に現状を捉え、その上で自分が何をすべきなのかタイミングを見計らって行動を起こせ、と説いているのです。
挑戦するタイミングをどう見計らうのか?
世の中には、「新しい挑戦をどんどんして成果を出している人」と、「何の挑戦もしないでほとんど成果の上がらない人」この2つのパターンがあると語られています。
2つのパターンの人間のちょうど真ん中にくるものは「常識」です。
まず、挑戦することに迷ったら、「常識」がどこに位置しているのかを見極めること。
次に、この「常識」より少し上を狙うことが、挑戦の成功ポイントであるとも語られています。
成果も期待できるが、リスクも予測される、いわば満潮に近づいていくそのタイミングこそが、挑戦の絶好の機会だと言えます。
やってみると決心をした場合、どれだけの損害が考えられるだろう?成功しなかったからといって、誰も君の腕を切り落とすわけではないし、監獄に放り込むことも、バイクを取り上げることもない。
それどころか、たたき出されれば私と話が合うようになる。私も実業界でちょいちょいそういう目に遭っているからである。
おかげでいまでは、決して失敗を振り返らない。昨日は夢想家にくれてやる。
私は今日の戦いのことで頭がいっぱいである。
考察
キングスレイ・ウォードが、偉大な父親として語り継がれる理由の一つが、息子に対する「不安を取り除き、未来への背中を押す」という姿勢だと思いました。
「挑戦することの大切さ」を息子に伝えて続けてきた父親。
その父親にとっての「挑戦」が、この「息子に背中を押す」ということ、そして「手紙を書き続ける」ということだったのかもしれません。
何歳になっても、どんな立場でも、その時点で最大限できる挑戦をし続ける、という深い学びを得ることのできる一冊ではないでしょうか。