AIの脅威
人工知能(AI)やオートメーション化によって、年間で5〜10%の仕事が消えていくと、コンサルティング企業PwCのJulia Lammは述べている。失われる仕事のボリュームは、これまでの年間1〜2%の5倍に達することになる。
Lammがこのデータを発表したのは、先日ジャマイカで開催されたカンファレンスTechBeach Retreatの場だった。
「全体の30%に及ぶ仕事が、2030年までに消えてしまう危険にある。世間の人々の55%が、自動化などのイノベーションで、仕事を無くすことを危惧している」と彼女は話した。
多少の煽りも含まれているかも知れませんが、上記の記事のようにAIの発達により、ますます仕事が人の手から奪われる流れは加速しています。
特に、銀行員、税理士、弁護士など、かつては高学歴エリートの代表格であった仕事も、今やAIにとって代わられる筆頭の職種といわれています。
そのような様々な職業が変化を求められる中で、新時代の営業の在り方について『AIに負けないためにすべての人が身につけるべき「営業学」』を参考にしながら、考えていきたいと思います。
- 作者:金川 顕教
- 発売日: 2019/03/22
- メディア: 単行本
目次
営業が仕事として残り続ける理由。
書籍の中では、営業の仕事において、「AIにはできないけど人間にはできる強み」について、以下の点があげられています。
- 「商品の魅力的に伝えること」
- 「商品を買った後の未来について語ること」
- 「人間同士の共感」
営業としての強みを誰に対して活かすか?
「俺はマンパワーを強みで頑張っていくぞー!!」と上記を挙げた点をがむしゃらにやっていく。というやり方だけでは、恐らくうまくいきません。
しっかりとターゲティングをして、対象顧客を定めた上で攻めこむことが大切です。
営業であれば売るべき製品やサービスの対象顧客をいくつかのレイヤーにセグメントできるはずです。
本書では、以下のように対象顧客をセグメントしています。
3:4:3
ポイントはAゾーンの3割の顧客と徹底的に関係性を深めることです。
そして、Bゾーンの4割の顧客をAゾーンまで育てることが次点で重要になります。
どうやって顧客との関係性を構築するのか?
答えは、「リアルコミュニケーション」です。
以下で引用したメラピアンの法則にもあるように、「実際に会って話す」という行為が、相手にとって最も影響度があるということが示されています。
この研究は好意・反感などの態度や感情のコミュニケーションについてを扱う実験である。感情や態度について矛盾したメッセージが発せられたときの人の受けとめ方について、人の行動が他人にどのように影響を及ぼすかというと、話の内容などの言語情報が7%、口調や話の早さなどの聴覚情報が38%、見た目などの視覚情報が55%の割合であった。この割合から「7-38-55のルール」とも言われる。「言語情報=Verbal」「聴覚情報=Vocal」「視覚情報=Visual」の頭文字を取って「3Vの法則」ともいわれている。
もし、あなたが営業をしている商品に多少優れた性能を持った商品が競合として現れたとしても、リアルな関係性が構築されている顧客は、あなたのおすすめする商品を購入するはずです。
リアルコミュニケーションで関係が深まる3つのステップ
具体的な顧客とのコミュニケーションの仕方について触れていきたいと思います。
リアルに会う時間を捻出する。
⇒時間の断捨離をすることです。これからの営業という仕事においては、資料作成など事務的な作業というのは、最低限のスキルさえ身につけてしまえば、はっきり言ってすべて時間の無駄です。自動化できる部分や、委託できるものは投資をしてでも、「リアルなコミュニケーション」の時間を捻出することに注力すべきです。
ビジネス抜きで、食事に行く。
⇒これからの社会において、顧客との関係性において大切なことは「フラットさ」です。
ひと昔前の接待などは「返報性の原理」に基づいた相手に見返りを求める関係性でした。
「返報性の原理」
人は他人から何らかの施しを受けた場合に、お返しをしなければならないという感情を抱くが、こうした心理をいう。この「返報性の原理」を利用し、小さな貸しで大きな見返りを得る商業上の手法が広く利用されている。(https://ja.wikipedia.org/wiki/返報性の原理)
しかし、この方法だと相手にとっては、どうしても「何かお返しをしなくては。」という負荷がかかります。すると、関係性を深めるための回数が圧倒的に少なくなります。
逆の発想で、「何かをしてもらう」という従来の「営業と顧客」との関係性では考えられない、公私混同とも捉えられるずうずうしさが、フラットな関係性を継続させるコツだと筆者は語ります。
狭く深い関係性で、アフターフォローを怠らない。
「とにかく多くの人に会う」はNGです。
なぜなら、アフターフォローまで手が回らないからです。
そして、現代では狭く深い関係性の中で、その関係でしか発揮できないシナジーによって新たな効果が生まれ、拡散によって新たな関係性が出来上がるという図式が成り立ちます。
つまり、広い範囲に影響力を持つことも、狭く深い関係性を重視しなければ、なしえないということです。
考察
本書の著者は、フリーランスの経営者であり、当然仕事における自由度も高いです。
僕らのように、様々な制約のあるサラリーマンにとっては、関わる顧客とのリスクを洗い出しながらどこまで人間対人間とのコミュニケーションを攻め込んでできるかという示唆として受け取ることができると思います。