大成功した人物に共通する秘訣とは?
ペンシルバニア大学で成功の心理学を研究し、
その研究結果が書籍として世界的ベストセラーを果たした
アンジェラ・ダックワース氏。
彼女自身の経験として、
幼少期には両親からの高い期待とは裏腹に、
トップ校の進学クラスから落第という挫折。
「お前には才能がない」と言われ続けながらも、
大学では継続的な努力によって研究成果で「マッカーサー賞」を受賞。
(「マッカーサー賞」とは、アメリカでは別名「天才賞」と呼ばれ、
「ノーベル賞」に匹敵するほど有名な賞。)
彼女は大成功した人物に共通する秘訣とは、
「並外れて努力家」であるという点であり、
それは、「情熱」×「粘り強さ」に起因するものである。
ということを、自分の成功体験とともに証明にしたのです。
そのダックワース氏の著書が、
『GRIT~やり抜く力~』です。
この書籍は、自分が勝手にメンターとしているFlierの荒木博行氏が、
Voicyチャンネルの初回で紹介していたり、数々のビジネスマンに愛読され、
実践が行われている1冊です。
今回の記事では、自分なりの考察も交えながら、
この『GRIT』について言及していきたいと思います。
なぜ、やり抜く力が必要なのか?
やり抜く力の重要性を証明する事例として、
米国陸軍士官学校で、入隊から二か月後に実施される「ビースト」(獣舎)という基礎訓練のエピソードがあります。
この訓練についての学校側からの説明はこのようなものです。
『士官学校での4年間で、肉体的、精神的にもっとも過酷な訓練であり、
諸君が士官候補生から兵士へと変身を遂げるためにおおいに役立つ』
そして、士官候補生はこのように語ります。
「とにかくあらゆる面で、
これでもかというほど試練が与えられます。
訓練は想像を絶する過酷さで、家族とすら連絡は取れません。
そんななかで精神的にも、ギリギリの状態に追い込まれます。
そうすると弱点がさらけだされる。そこがポイントです。
士官学校は鍛錬の場なのです。」
この過酷な訓練に、全米から選抜された体力自慢でスポーツ万能な1200名の候補生のうち、5分の1が卒業を待たずしてリタイアしてしまうのです。
では、どんな人が最後まで脱落せずに残るのでしょうか?
非常に興味深いデータがあります。
それは、学校に入学した時点での総合的なスコアと、
厳しい訓練に耐え抜き学校を卒業できるかどうかは、
相関関係にないということがわかっているのです。
むしろ、優秀なスコアで入学をした生徒と、
落第ギリギリで入学した生徒の脱落の割合は変わらないという事実もあるのです。
そして、厳しい訓練に耐え抜き学校を卒業できた候補生に共通する力は、
- 学力
- 体力
- 外向性
- 情緒の安定性
- 誠実性
これらのいずれでもなく、
粘り強さを持って「やり抜く力」を持っていた学生だったのです。
これは、米国陸軍士官学校だけの1例ではなく。
これらの事例からも、
同じように「やり抜く力」の重要性が報告されています。
どうすれば「やり抜く力」を身に付けることができるのか?
「やり抜く力」を身に付ける為には、
2つの側面の重要性が本書の中では語られています。
それは、自分の内側を伸ばしていく精神的な部分と、
外側から伸ばしていく行動の部分です。
精神面
「やり抜く力」を育む精神的な部分は、
興味をもつ
↓
目的ができる
↓
練習する
という三段階を経て、培われていきます。
興味
NASAの宇宙飛行士であるマイク・ホプキンスは、
宇宙飛行士になろうと思ったきっかけについてこのように語っています。
「高校生の時に、テレビでスペースシャトルの打ち上げを見たことが、
宇宙旅行に大きな興味を持つきっかけになった。
でも、そのたった1度の打ち上げで夢中になったわけではない。
ひとつのことを調べていくと、そのつながりでどんどん新しい情報が手に入って、夢中になってしまったんだ。」
つまり、自分が興味や関心を持てるものというのは、
急に降って湧いてくるものではなく、
様々なことに触れて、少しずつその接触回数を増やしていくことで、
発見されるものであると言えると思います。
目的
ほとんどの人は、まず「自分が楽しい」と思えることに興味を持ちます。
やがて、それを真剣に取り組むことで、自分の個人的な興味が他の人の役に立つかもしれないと気付くことから「目的」が生まれるのです。
ダックワース氏が研究の中で、一流やエキスパートと呼ばれる人に、
「目的」について行ったインタビューでは、例外なく他者のことを口にしたそうです。
- 国のため…
- 社会のため…
- クライアントのため…
- 子どもたちのため…
がん研究のために設立された「アレックスのレモネード財団」が
立ち上がったきっかけは、アレックスという4歳の男の子の行動です。
アレックスは物心ついたときからずっと病気だった。
1歳の時、神経芽腫と診断されたのだ。
そんなアレックスが、4歳の誕生日を迎えてまもなく母親に言った。
「退院したら、レモネードの売店をやりたいの。」
アレックスは5歳になるまえに最初のレモネードスタンドを開店し、
そこで稼いだ2000ドルを
「まわりの子たちに助けてもらったから、みんなを助けてください」
と言って、病院の担当医たちに寄付したのだ。
4年後、アレックスはこの世を去った。
しかし、アレックスの行いによって奮起した多くの人たちが、
レモネードスタンドを次々に開店したのだ。
練習
「やり抜く力」を持っている一流の人々が、
練習において最も大切にしていること。
それは、「カイゼン」です。
一流の俳優であれば、
「どの役を演じる時も、何か新しいものを生み出したい。
自分の能力を伸ばしたい。」
一流の作家であれば、
「どの本も、前作を超えるものを書いていこうと思って書いている。」
皆一様に、こんなことを言います。
そして、それらの人々に共通していることが、
「1万時間の法則」です。
一流と呼ばれる人たちは、
一流と呼ばれるまで練習を10年以上、
延べ1万時間繰り返していました。
また、同じく10年ほどの経験がある人でも、
練習時間では1万時間の半分にも達していなかったと研究では報告されています。
行動面
「やり抜く力」を育む行動的な部分は、
継続努力をする
↓
成功体験を積む
↓
成功可能性の高まる環境に身を置く
という三段階を経て、培われていきます。
継続努力
「やり抜く力」の下地をつくるためには、
とてもシンプルな原則があります。
それは、「どんなことをしたか」は関係なく、
「やると決めたこと」を継続できるかどうか。
ということです。
どんな分野においても、活躍している人材は、
何事にも「継続して打ち込む」という共通点が見られるのです。
成功体験
単純に継続をするだけでも、十分に価値があることです。
しかし、「やり抜く力」を身に付ける為には、
継続の中で、さらにカイゼンを重ねていく必要があります。
それは、その先ある成功体験を得ることができるからです。
成功体験の積み重ねは、
打ち込んでいる物事に大きな影響をもたらします。
マイクロソフトの入社試験でも、
高度なプログラミングスキルより、
この継続⇒改善⇒成功体験のプロセスが重視されていると言われています。
周囲環境
自覚のあるなしに関わらず、僕たちは自分が属している文化、
自分と同一視している文化の影響を、強く受けています。
著者の父はデュポン社に勤務しており、
自分のことを「デュポンター」と言っています。
TVでデュポンのCMが流れると、
「より良い暮らしのために、より良い製品を」
とキャッチフレーズを一緒につぶやくこともあったそうです。
また、オリンピック選手の研究をしている社会学者のダニエル・チャンブリスは、
世界トップレベルの競泳選手の練習について、
このように語っています。
「毎朝4時に起きて水泳の練習に行くなんて信じられない。
よほど、非凡な人間にしかそんなことできないはずだと思ったんです。
でもそうじゃなかった。
周りの誰もが4時起きして練習に行くような環境にいたら、
自分だって自然とそうなる。当たり前になるんです。」
つまり、周囲の価値観が、自分の信念に大きく影響していくということです。
まとめ
最後に、筆者の「やり抜く力」についての4つのポイントを引用したいと思います。
「やり抜く力」が強いとは、
- 一歩ずつでも前に進むこと。
- 興味のある重要な目標に、粘り強く取り組むこと。
- 厳しい練習を毎日、何年間も続けること。
- 七回転んだら、八回起き上がること。