【企業分析】タクラムに学ぶ新時代のコンサルティング【デザインエンジニアリング】
今僕らの生活している社会は、第4次産業革命の真っただ中にいます。
これまでの産業の革命の流れを簡単におさらいすると、
- 第1次産業革命⇒蒸気機関車や自動織機などが発明された機械化の時代。
- 第2次産業革命⇒電気や電話などが発明された電子化の時代。
- 第3次産業革命⇒コンピューターが発明されたデジタルの時代。
そして、第4次産業革命とは、
これまでの産業革命がもたらしたものに、さらに「データ」と「AI」という要素が加わってきたという考え方です。
つまり、物理層とデジタル層が混然一体となってるような状況と言えます。
具体的に実生活に関わるものだと、スマートスピーカーや、自動運転などが当てはまると思います。
そして、それらの変化によって引き起こされるパラダイムシフトとして、
これまでは分業で成り立っていた「エンジニアリング」と「デザイン」という2つの役割が、
混ざり合った形で、プロダクトがつくられるようになってきているということです。
例えば、テクノロジー企業のGoogleが、クリエイティブディレクターとして、
有名なジュエリーデザイナーを抜擢して、製品デザインに力を注いでいるという事例もあります。
このような時代の変化をいち早く捉え、
実践している日本企業が、今回ご紹介する「タクラム」です。
タクラムとは?
デザインとエンジニアリングの両分野に精通する「デザインエンジニア」が集まるデザイン・イノベーション・ファームです。
- 無印良品のiPhoneアプリ「MUJI NOTEBOOK」アプリ開発
- クラウド名刺管理アプリ「Eight」アプリ開発
- NTTdocomoの「iコンシェル」や「iウィジェット」のUI開発
- ミラノサローネに出展された東芝のインスタレーション「Overture」など…ジャンルの枠に制約されない活動をしています。
代表の田川氏は、「ものづくり」をしたいという夢を持ってエンジニアのインターンに参加した時にあるギャップを感じたそうです。
そのギャップとは、企業の「ものづくり」には、エンジニアよりも上流に、
デザイナーやマーケターという存在がいて、彼らが決めた仕様通りにものづくりをしなければいけないという違和感だそうです。
その後、これからの時代は「ものづくり」も「デザイン」も両方できなくてはいけないだろうと考え、イギリスに留学してプロダクトデザインを学んだそうです。
当時の田川氏のこのアクションは、まさに現在に時代が求めるものをかなり正確に捉えたものだと言えます。
タクラムの経営フレームワーク分析
- 「ターゲット」⇒顧客
- 「バリュー」⇒提供価値
- 「ケイパビリティ」⇒リソース・オペレーション
- 「収益モデル」⇒プロフィット
この4つの切り口から分析を行っていきます。
ターゲット
「新たな挑戦に挑む企業」です。
その中でも特に、上流(経営層)において「描いているビジョンを可視化できない」という悩みを持っている企業が主なターゲットと言えます。
代表の田川氏はこのように語ります。
「経営者やリーダーの頭の中にあるビジョンを、外に出して、形にして見せてあげることができるのです。それが仮にプロトタイプであったとしても、モノができた瞬間に、人間の思考のピントが合い始めるのです。プロジェクトに関わる人が100人や200人もいたとしても、モノがバンッと出てくることによって、「あ、そっちなんだ」とベクトルが揃う。」
バリュー
デザイン駆動型のイノベーション
タクラムでは、デザインを出発点として経営における
- ブランドの力
- ノベーションの力
これらを向上させるという価値提供を行っています。
そして、「デザイン経営」を推進するために必要な条件を2つ挙げています。
まず1つめが、経営チームの中にデザイン責任者を置くこと。
日本企業で経営チームにデザイン責任者がいる会社って非常に少ない。何でデザイン責任者が必要かっていうと、経営者たちがデザインについて会話をする頻度と内容の質を上げてかなきゃいけないんですね。そうすると経営会議でちゃんと「今の状況はこうで理想値はこうでその差がどうで」と解説して、こういうマイルストーンで埋めていこうって発言する人が必要になってくるわけで。
2つめが、事業戦略とか新規事業を構築する1番上流の方からデザインっていうスキルを使っていきましょうっていうことです。
スタートアップでは思ったよりも早くCXOを置くカルチャーが広まってまして。今日の深津君もケイクスのCXOに着任されたり。あとは坪田さんっていう方がいらっしゃるんですが、クラシルっていうサービスをやっているdelyのCXOになられたり、DeNAにデザイン責任者が執行役で着任したり、Yahoo!がクリエイティブディレクターを置いたり。
ケイパビリティ
越境型の多様なプロフェッショナル
タクラムは、包括的なアプローチのため、特定の領域におさまらない仕事に携わる。
あるエンジニアはモバイルサービスのUI設計から空港のラウンジの空間デザインまでをこなし、あるデザイナーは本の装丁も、食品の商品企画も手がける。各メンバーはおよそ3ヶ月に1回のスパンで、業界や職分を超えプロジェクトを担当するといいます。
メンバーに多眼的視点を養ってもらうためにあるときはデザイナー、あるときはマーケター、あるときはエンジニアとして考えられるように。ビジネスとテクノロジーの両方のフィールドからも、デザインを考える姿勢を伺うことができます。
収益モデル
コンサルティング料
タクラムの主な収益源はコンサルティング料です。
デザインを主軸とする競合企業が少ない中で、
他のコンサルティングサービスとは、大きな差別化をしていると言えます。
また、デザインとエンジニアリングの両側面から実務面まで入り込んで、
クライアントと業務を進めていく点でも、先進的な業態であると言えます。
今後さらに増えていくであろう「デザイン」という分野の成長に期待が高まります。
まとめ
参照
・タクラム:https://ja.takram.com/
・BNL:https://bnl.media/2016/11/takram-tagawa.html
・キャリアハック:https://careerhack.en-japan.com/report/detail/17
・GLOBIS知見録:https://globis.jp/article/7214