『深く、速く、考える』とはどういうことか?
『深く、速く、考える』とはどういうことか?
自分の頭で考えること
ビジネスでも日常においても、未来が予測できない状況において、とても重視される考え方です。
しかし、どれだけの人が「自分の頭で考えるってどういうことですか?」という問いに対して自分なりの答えを持っているでしょうか。
僕自身も、自分の言葉だけでそれを語ることはできないで悶々としていました。
そんな時に手に取った1冊が、『深く、速く、考える』という本です。
本書では、「考える」ということを改めて整理し、さらにそこから深く、速い思考を生み出す技術を教えてくれます。
そもそも物事を理解するとは?
何かに対して「思考をする」ためには、「理解をする」という前提が存在します。
「理解する」とは、新しいことがらを、自分がすでに知っているこがらと結びつけることなのです。逆に、「未知のことを既知のことと結びつけるのは、脳にとって理解しやすいやり方であり、人間の認知上のクセである」ともいえるでしょう。
つまり、理解をする為には、知識が多ければ多いほど、たくさんの事柄がつながり合って記憶されるということが言えます。
2種類に分けられる思考のタイプ。
理解=知識の量に比例することがわかりました。一方で、「思考」とは少し考え方のベクトルが異なります。思考とは、理解した知識を「加工」して「結び付ける」という能力なのです。
本書では、「加工」を抽象思考と呼び、「結び付ける」ことをアナロジー思考と呼びます。
ここで2つの問題を例に解説をしたいと思います。
問い①
あなたは医者で、胃に悪性腫瘍を持つ患者を受け持っているとしましょう。患者を手術する ことは不可能ですが、腫瘍を取り除かない限り、患者は死んでしまうという状況です。ここ に腫瘍を破壊することができる光線があります。もしこの光線が一度に適切な強度で照射 されれば、腫瘍を破壊することができます。ただし残念ながら、この強度の光線は、腫瘍までの健康な組織を通過する際、それらも傷つけてしまいます。低強度の光線であれば健康 な組織には無害ですが、腫瘍を破壊することもできません。どうすれば、健康な組織を傷つけずに腫瘍を破壊できるでしょうか。
問い①に対する考え方
多数の光源をすべて異なる角度から腫瘍に照射するように配置し、それぞれの光源の強度 は健康な組織を破壊しない水準まで弱めてすべての光源を一斉に照射すると、腫瘍部分だけに強い光があたり、途中の組織は破壊されない。
問い②
ある独裁者が、 ある小国を要塞から支配していました。この要塞は国土の真ん中に位置し、 そこから車輪のスポークのように、放射状に多数の道路が伸びています。ある将軍が、この 要塞を攻撃・占領して、独裁者の手からこの国を解放することを誓います。将軍は、彼の指揮下にある軍隊全体が独裁者の要塞を一度に攻撃できれば、要塞を陥落させられることを 知っています。しかし、 国内各地に送り込んでいたスパイは、各道路に地雷が敷設されて いることを報告してきました。 この地雷は、 独裁者が兵士や労働者を動かせるように、 少人数の集団であれば安全に通ることができるように設定してありますが、大きな軍勢が通ると反応して爆発するようになっています。将軍はどのようにすれば、自軍を地雷の犠牲 にせずに独裁者を倒すことができるでしょうか?
問い②に対する考え方
将軍は自分の軍隊を放射状の道路の数 だけの小隊に分けて、それぞれの道路から要塞に進み、要塞を一斉に攻める。こうすると、地雷の上を安全に通過しつつ、中心の要塞を全軍が一斉に攻撃できるため、独裁者を倒すことができる。
問いに対する考察
この2つの問いにおいては、表面上「医療」と「政治」という全く異なるテーマが設定されています。
しかし、抽象化とアナロジーという2つの視点を用いることで、より本質に近い捉え方ができます。
抽象化思考=どちらの問題も「勢力を分散して多方向から同時に攻める」ことが有効である。
これが、隠れた本質であると言えます。
アナロジー思考=抽象化した本質が、両方の問題に共通していることの発見と、さらに別の状況においても転用をすること。
結論
思考の訓練とは、複雑で膨大な問題に取り組むことはでは決してありません。
それよりも、日常の中における些細な問題に対して、抽象化思考による本質の発見と、アナロジー思考による類似する出来事への転用。
この考えの習慣化が、深く、速い思考を生むのだと思います。