【企業分析】「ウェルスナビ」から学ぶ資産運用の新しいカタチ。【ロボアドバイザー】
「全体の約4%」
この数字は、日本国内における個人資産1800兆円に対する投資信託の保有率を示したものです。
そこからもわかる通り、日本全体としての「貯蓄志向」の高さと、「投資」に対する関心の低さが依然として強い傾向にあります。
一方で、欧米をはじめとする海外では、国民の投資への関心は総じて高く、投資をベースとした資産形成が一般化しています。
成長する世界経済を背景にしたとき、「貯蓄」と「投資」どちらの選択に将来性があるかは明白です。
しかも今後、終身雇用や年金制度の崩壊が危ぶまれる中で、自分自身で資産形成をしていくことは待ったなしの状況です
しかし多くの日本人が、その一歩を踏み出せないのは、「未知のものに対する不安」以外の何物でもないと思います。
そんな状況に対して手を差し伸べるのが、「ウェルスナビ」が提案するロボアドバイザーを活用した資産運用サポートサービスです。
ウェルスナビとは?
国内ロボアドバイザー市場において、預かり資産、運用者数ともに国内第1位を継続的に確保しています。2019年6月から2020年6月の1年間で、国内ロボアドバイザー市場全体の預かり資産は1,416億円増加しており、同社の増加分が962億円と全体の68%を占めるなど、高いシェア率を保持しています。
「ウェルスナビ」のビジネスフレームワーク分析
- 「ターゲット」⇒顧客
- 「バリュー」⇒提供価値
- 「ケイパビリティ」⇒リソース・オペレーション
- 「ビジネスモデル」⇒プロフィット
この4つの切り口から分析を行っていきます。
ターゲット
「退職金が減少し、年金への不安が増す30-50代の世代。」
日本では、老後の資金として2,000万円が必要とされていると言われています。
終身雇用の終焉と人生100年時代の到来により、働く世代の資産形成という新たなニーズが生まれている今、誰もが安心して気軽に利用できる資産運用サービスを提供することで、働く世代に豊かさ提供することを企業のミッションとしています。
バリュー
「ものづくりする金融機関」
金融業態でありながら、従業員の半数以上は、エンジニアやクリエイターという異質な側面があります。そこから生まれる提供価値について、執行役員CPOの岸田氏は以下のように語ります。
・「難しい」からこそシンプルに
金融や資産運用について、「難しい」「不安」といったイメージを持つ方がたくさんいらっしゃいます。ロボアドバイザー「WealthNavi」をご利用の方からも、「情報収集が大変そう」「相談できる人が身近にいない」といった声がよく聞かれます。CEO柴山の想いや「長期・積立・分散」の資産運用のノウハウがお客様に届くよう、シンプルかつ信頼感を持っていただけるものづくりを目指しています。
・コンセプトをサービスに落とし込む
「難しい」というイメージを「わかりやすい」に変えるには、例えて言うなら、1000の言葉を1つの画面で表現する必要があります。“コンセプトの翻訳者”として、CEO柴山の想いや「長期・積立・分散」の資産運用のノウハウをいかにサービスに落とし込んでいけるかが、腕の見せどころです。
・サービスを自分事に置き換える
WealthNaviを開発しているのは20~40代のエンジニアです。お客様に近い立場で、「自分たちが本当に使いたいか?」「1年後、5年後、10年後も使っていたいサービスか?」と日々、自問しながらサービスを作っています。「きっとわかってくれるだろう」という期待を入れ込まず、作り手とお客様とのギャップをなくしていきます。
https://www.wantedly.com/companies/wealthnavi/post_articles/179715
ケイパビリティ
ロボアドバイザー
スマホやパソコンから5つの質問に答えるだけで一人ひとりに合った運用プランを提案し、いつでも資産の状況を確認できます。忙しく働く世代でも、すきま時間で将来に向けた資産運用を手軽に行うことが可能です。
世界の富裕層や機関投資家が実践する「長期・積立・分散」の資産運用を、テクノロジーの力で自動化。ノーベル賞受賞者が提唱する理論に基づき、6~7つのETF(上場投資信託)を通じて、世界約50カ国1万1000銘柄に分散投資します。資産配分の決定から発注、積立、リバランス、税金最適化まですべて自動で行います。
自動税金最適化(DeTAX)
DeTAX(デタックス)とは、リバランスで生じた利益や分配金の受け取りになどによって生じる税負担の一部または全部を、保有銘柄の含み損を実現して利益と相殺することにより、翌年以降に繰り延べる機能です。
分配金の受け取りやリバランスによるETFの売却によって利益が出た場合、本来20%の税金を負担しなければいけません。
しかし、ポートフォリオの中に含み損がある銘柄があれば、その銘柄をいったんウェルスナビに売却し、同時に買い戻すというクロス取引を行います。これにより含み損を実現損にさせ、発生した利益と相殺することでその年の税金を軽減させるのです。
収益モデル
(引用:STARTUP DB)
「運用手数料と信託報酬」
営業収益の中心である受入手数料は、ユーザーからの手数料であり、預かり資産に連動しています。
営業損失は創業から赤字が続いていますが、2018年と2019年は広告宣伝費が10億円以上に達したことが要因となり、営業損失が増加しています。
しかし、営業収益の成長と各種費用の営業収益に占める割合の減少により、2020年9月における営業損失は前年度の約40%以下に留まっていることからも、今後の黒字化が期待できると言えます。
まとめ
「財を蓄えること=幸せ」
では決してないと個人的には思っています。
しかし、最低限ある一定の蓄えがあることで、日々の精神状態を担保できたり、時には大胆なリスクを取ることができるということもあると思います。
自分が本当にお金を支払いたいと思える体験や経験に投資をすることを優先にしながらも、一方で、蓄えは着実に作っておくという両面の考え方が大切だと思います。
その意味で、ウェルスナビの提案するおまかせ型の長期分散投資は、時間という自分のもう一つの資産を減少させることなく着実な蓄えを効率的に行ってくれるという面で非常に有能であり、将来的にも伸びていくビジネスモデルだと感じます。