前職のスキルを引きずるプライドが高すぎる部下の話。
前職のスキルを引きずるプライドが高すぎる部下の話。
部下のマネジメントをする上で、必ず障壁となるものがあります。
それが、部下のプライドです。
プライドがカタチ作られるには、以下のような要因があると考えています。
- 上司よりも学歴が上
- 上司よりも年齢が上
- 上司よりもある分野のスキルが非常に優れている
僕はよりにもよって、この3つをすべて満たした部下を持つことになってしまったことがあります。
世間一般に見たら、それほど珍しいことはないかもしれませんし、そんなこと気にするべきことではないかもしれません。
しかし、僕には彼のマメジメントは大きなハードルであり、彼自身も上司である僕よりも自分が優れている部分に対して、並々ならぬ自信を持っていたことも、状況をより複雑にしていました。
今回の記事では、そんなプライドが高すぎる部下との向き合い方について、自分の経験を通じて考察していきたいと思います。
IT企業からの転職組であるSさん
「社員のITリテラシーが低すぎる」
これが、かねてより僕の会社における課題でした。
もちろん、それは僕も同様に当てはまります。
しかし、ついにそのような状態にメスを入れようと人事部も動き出し、IT企業からの転職者を優遇するような会社としての方針を打ち出したのでした。
ちょうど、そのタイミングで数名の入社があったうちの一人であるSさんが、僕の部下として配属されてきたのでした。
Sさんは、僕よりも5つ上で、学歴も申し分なく、誰もが名前を聞いたことがある某IT企業からやってきました。
社内のこと以外は、すべての面でスペックが上であることは間違いない人材をなぜ管理職の中ではペーペーの僕のような人間のところに配属したのか?人事部の意図はいまだに見えませんし、また、Sさん本人もどのような想いで、この会社を選んだのか?がわかりませんでした。
Sさんを職場に案内すると、彼がかなりの絶望感を感じているのがすぐにわかりました。
- どのデスクも紙の書類が山積み
- PCはやや古い型のWindows
- 通路には紙の掲示物が多数
「だいぶ、前の会社と雰囲気違いますよね?」
とフォローすると、
「ええ…だいぶ…」
とだけ乾いた返事が返ってきました。
しばらく沈黙のあと、
「ちなみに…」とSさんは口を開き、
「私は、私なりのやり方でやらせていただきますので。」
とだけ言葉を残して、その場を去ってしまいました。
Sさんの言葉に僕の不安は増幅する一方、会社が変わらなければいけないのは事実で、チームとしてどうSさんを関わりながら、僕ら自身がどう変われるのか?を考えるのは、非常に難しい問題だと思いました。
周囲とSさんの溝
僕がSさんと握った目標は、「チーム内の仕事のデジタル化」でした。
この目標を達成し、1つの成功事例をつくり、社内にも波及させたいという想いからでした。
Sさんには、現状で行わている業務を一通り知ってもらい、できることからデジタルシフトしていければよいと思っていました。
しかし、Sさんがチームに入って数週間、他のメンバーと彼の溝は深まるばかりでした。
- 電話はしないチャット
- 紙は使わないデータはクラウド管理
- 会議はリモートのみ
Sさんはメンバーが、それらのツールを使いこなせず、コミュニケーションに支障が出ることにイライラし、他の人たちはSさんが一日中PCの前で何をやっているかわからない。という全くかみ合わない状態が続きました。
プライドの高いSさんは決して周囲との足並みを合わせるようなことせず、その問題は深刻化していきました。
Sさんと周囲の溝を埋めるために必要なこと
Sさんと周囲のメンバーに共通していたことは、両者が「自分が正義」という思い込みを持ってしまっていたことです。
Sさんにとっての正義は、すべてを効率的にオンラインで処理すること。
周囲のメンバーにとっての正義は、これまで通りのやり方の精度を磨いていくこと。
どちらも半分は合っていて、半分は間違っています。
結論としては、相互理解がなければ仕事は全く前には進まないということです。
Sさんには、少しアナログ寄りの動きもしてもらい周囲と目線を合わせてもらうこと。
周囲のメンバーには、食わず嫌いをせず、Sさんのやり方から学ぶ姿勢を持ってもらうこと。
これらが必要不可欠でした。
特にプライドの高いSさんには、逆にそのプライドをくすぐるような形で、その能力を評価し持ち上げることで、動いてもらうというアプローチが有効であることを発見しました。
まとめ
今もなお、組織の仕組みや、慣れ親しんできたやり方を変えるということの難しさを実感しています。
それは、過去に積み重ねてきた成功体験が大きければ大きい程、難易度は上がっていきます。
組織だけでなく、個人でもそれは同じだと思っています。
Sさんが転職したきたことからの学びは、まさにそんな変化することの難しさと、変わる為には、未知のものをゼロベースで理解しようとする姿勢の大切さです。