【交渉】なぜ自分の話が聞いてもらえないのか?【提案】
仕事の中では、上司・顧客・取引先に対して、
何か交渉や提案をしなければいけない場面は、どんな仕事でもあると思います。
そういった場面で、最も大切なことは何でしょうか?
伝える内容自体が、しっかりと考え抜かれて相手にとって意味あるものであることは、
もちろん前提条件として大切なことです。
しかし、それ以上に大切なことは、
「相手に興味を持ってもらい、話を最後まで聞いてもらうこと」
ではないでしょうか?
いくら完璧に準備したプレゼンテーションでも、
相手に聴く気持ちがなければ、その手段は決して有効に作用しません。
僕自身も、何日もかけて準備した企画書のプレゼンが、
伝え方が悪く、上司に全く聞く耳を持ってもらえないという経験がありました。
そして、それを見かねた同じ部署の先輩が、
別のタイミングで同じ内容の企画書を使って、
その上司にプレゼンをしました。
すると、驚いたことにその上司は、
非常に企画に興味を持ち、あっさり企画を受け入れたのです。
その際に、なぜその先輩がプレゼンしたことで、
企画が通ったのか?ということを考えました。
- 「誰が言うか」が大切?
- 「どのタイミングで言うか」が大切?
- 「どうやって言うか」が大切?
正直、上記の3つすべて大切ではあると思います。
そして、こんなことを考えました。
①自分は自分でしかない。急に別の誰かにはなれない。
②相手の時間はコントロールできない。
③自分の時間を相手に合わせることはできるが、限界がある。
伝え方は、自分次第。練習や工夫で変えることができる。
僕が出した結論は、③です。
やはり、
「相手に興味を持ってもらい、話を最後まで聞いてもらうこと」
ということではないかと…
この技術を高める為に、
心理学者のロバート・チャルディーニ氏が一躍有名になった
世界的ベストセラー『影響力の武器』の続編である『PRE-SUASION』が、
非常に参考になりました。
今回は、本書の一部を参考にしながら、
交渉や提案の場面で有効な話術について言及していきたいと思います。
謎を提示
話の導入はわかりやすくて、シンプルな話題からスタートします。
まず、相手に対して話題への共感や理解を促すことが大切です。
十分に話題に対する理解が深まったところで、
その話題の中で相手が知らない「謎」の要素を提示するのです。
人は自分が全く知らないものに対しては、興味をそそられませんが、
自分の興味や関心のある話題についての「知らない部分」については、
前のめりになってくるのです。
チャルディーニ氏は書籍の中で、
1960年代のアメリカタバコ業界の広告キャンペーンの成功例が用いられています。
この話題は、アメリカのビジネスマンであれば、
とても有名な話で多くの人がその事実を知ってます。
しかし、「マーケティングにおいてどんな意思決定が行われていたか?」
という点について知っている人は多くいません。
しかも、その意思決定によって、
タバコ業界は3割以上の広告費を削減しながらも、
歯止めがかからない売上減少を乗り越え、大幅な売上増加を果たしたのです。
これが、相手の興味関心をそそる「謎」の要素なのです。
謎を深める
相手が「謎」に対して興味を持ってくれば、
さらにその「謎」を深めることによって、
自分のペースに持ち込むことが可能です。
例えば、
売上の低迷に苦しむアメリカのタバコ業界は、
当時では最も社会的影響力の大きかった「テレビ」と「ラジオ」
というメディアから自ら撤退していった。
こんな、論理的には説明のつかない事実の提示で、
さらに謎を深めていくのです。
いくつかの解決策を提案
さて、ここで少しだけ相手の頭に浮かぶクエスチョンマークに応えていきます。
相手の考える「なぜ?」に寄り添っていくのです。
引き続き、タバコ業界の例でみていきます。
彼らが大型メディアから撤退していった理由については、
いくつかの理由が考えられます。
- 消費者の健康を真摯に考えるようになった。
⇒この選択が真実であれば、非常に喜ばしいことだと思います。
しかし、業界に携わる人々からすれば、自分たち自身の生活も関わってくる問題です。
安易にこのような選択をすることは考えにくいです。
- 別の広告戦略を選択するようにした。
⇒テレビ、ラジオ以外にもメディア媒体の選択肢は存在します。
新聞、雑誌、野外広告、そして映画。
このあたりにヒントがありそうです。
謎解き
謎を深め、一緒に検討し、ようやく答え合わせです。
実は、タバコ業界にとってテレビ、ラジオの放送メディアには、
大きなメリットと同時にデメリットもありました。
それは、アメリカの通信局は、賛否両論ある話題に対して、
すべての立場に公平に広告時間を与える
(タバコのように体に有害な影響のある嗜好品はなおさら)
「公正の原則」というルールを定めていたのです。
つまり、タバコのCMを1本打つと、必ずその反論のCMが1本打たれていたのです。
せっかく、大きな広告投資をしても、効果が半減してしまいます。
そこで、彼らは「敵のいない」広告分野を選択したのです。
特に注力したのは、映画分野です。
B&Wは、1年間で22本の映画に、対価を支払って自社製品を登場させました。
それは、有効に作用しました。しかも、投下コストは3割に抑えながら。
結論
ここまでの話で、「へぇ、当時のタバコ業界ってクレバーだね。」
で終わってはいけません。
ここから学ぶことは何か?
そして、そこからあなたが相手にさせたい意思決定は何か?
ということが最も重要です。
つまり、今回のタバコ業界の話でいくと、
「あるメッセージを受け入れやすくする最も賢明なやり方の1つは、
それに対する強烈な反論に触れる機会を減らすことである。」
という結論にたどり着きます。
まとめ
- 謎を提示
- 謎を深める
- いくつかの解決策を提案
- 謎解き
- 結論
このような教訓を応用することで、
相手に話を聞いてもらえるようになるだけでなく、
最終的な意思決定にまで、影響を与えることができるのです。