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30代ビジネスマンの備忘録。 マネジメントやマーケティングに関するビジネススキルや、サウナ、ウィスキー、時計などの趣味について。

【企業分析】エアークローゼットから学ぶ新しいファッションビジネスモデル。【サブスクリプション】

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【企業分析】エアークローゼットから学ぶ新しいファッションビジネスモデル。【サブスクリプション】

 

「サブスク」(サブスクリプション)

という言葉もだいぶ世間的に浸透した印象のある昨今です。

 

一般的にサブスクとは「定額料金を支払うことで、一定期間のサービスが受けられることを保証するサービス」のことを指します。

 

家電、車など様々な商品のサブスクサービスがあふれています。

サブスクでは、ユーザーのデータを収集してサービスの質を向上させていくという側面があります。

 

その中でも特に、定性的で感性の要素が強い「ファッション」という分野は、

データを収集・数値化する上でハードルが高いと言われています。

 

そんな「ファッション」というジャンルのサブスクで注目を集めているのが、

「エアークローゼット」です。

 

職場の女性の会話でも、しばしば「エアクロ」を使ってるという話を聞いたり、

眞鍋かをりさんを起用したTVCMなどの露出も増加しています。

 

エアークローゼットとは?


【公式】airCloset 眞鍋かをり_働く女性篇30秒ver.

 

2014年からスタートのファッションサブスクサービスです。

会員数は2019年時点で20万人を超え、上期の売り上げは15億円。

会員数、売上ともに前年比約60%増と急成長しています。

 

サービス内容は、

  1. レギュラー:月3着までレンタルし放題…9,800円+税
  2. ライト:月3着のみのレンタル…6,800円+税
  3. プラスサイズ:大きいサイズを月5着のみレンタル…12,800円+税

の3プランが用意されています。

 

一番人気のレギュラープランは、

ひと月に約10万円相当のファッションが楽しめることが、

セールスポイントです。

 

「エアークローゼット」の経営フレームワーク分析

  1. 「ターゲット」⇒顧客
  2. 「バリュー」⇒提供価値
  3. 「ケイパビリティ」⇒リソース・オペレーション
  4. 「収益モデル」⇒プロフィット

 

この4つの切り口から分析を行っていきます。

 

ターゲット 

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メインターゲットは20~30代の働く女性です。

 

そのようなファッションに興味はあるけれども…

仕事・出産・結婚など多様なライフステージの中で、

  • 実店舗に足を運ぶ
  • ファッション雑誌を見る
  • SNSでトレンドの情報収集をする

などの時間が取れない層が中心だと考えられます。

 

バリュー

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公式HPでは、以下のような提供価値が示されています。

 

■機能的価値

お客様に合ったパーソナルな体験の提供。

人とモノの最適な出会いの提供。

ひとりひとりの時間価値の最大化。

 

■情緒的価値

新しい自分の発見で、日々のワクワクが増える。

新しい出会いで、ライフスタイルが豊かになる。

パーソナライズされた体験による特別感がある。

 

■社会的価値

有意義なことに時間を費やすことができ、人類社会が発展する。

モノとの最適な出会いが、大量消費社会に変革をおこす。

新たな雇用と働き方の最適化により、経済活性をもたらす。

 

引用:エアークローゼット:https://www.air-closet.com/

 

 

これらを一言に集約すると、

「日常における感動体験の提供」

と言い換えられるのではないでしょうか?

 

社長の天沼氏はこのように語ります。

「忙しい中でも、日常の中に新しいファッションやブランドと出会える機会があれば、もっとワクワクする時間を増やせると考えたんです。」

 

ケイパビリティ

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エアークローゼットの最大の強みは、

そのコンサルティング力です。

 

ファッションは、人の印象を大きく左右する重要なファクターです。

(女性であればなおさらだと思います。)

全く同じ服でも、体型・年齢・肌の色などによって、

着用した時の印象は大きく変わります。

 

また、商品を画像で見た時のイメージと、

実際に着用した時の感じ方が異なることもあります。

 

そのようなファッションならではの「難しさ」を解消するのが、

このコンサルティング力だと考えます。

 

エアークローゼットのコンサルティング力を支える要素は大きく、

3つあります。

 

1.プロのスタイリスト

レンタルされる洋服は、顧客からの希望やアンケートに基づく内容から機械的に選ぶこともできます。

 

しかし、エアークローゼットでは、250名以上のプロスタイリストの「フィルター」を通すことで、よりユーザーにマッチングした提案を可能にしています。

 

2.アナリティクス

顧客情報を蓄積することで、自動的にユーザーの好みに合わなそうな商品を非表示にしたり、世の中のトレンド情報も取り込みながら「全体傾向」に合わせた提案ができるシステムも開発されています。

 

またエアークローゼットでは、過去に数百万以上のコーディネートを提案しながらも、一つとして同じものはないそうです。デジタルだからこそ、より個人に最適化したサービスを効率的に届けられると考えられます。

 

3.自社で在庫を持つ

ファッションサブスクにおいて、

最もリスクとなるのが「在庫」という問題だと思います。

 

在庫を持つことは、保管場所や管理の面で大きな負担となります。

一方、在庫を持たないこともリードタイムの遅れなど顧客満足に影響します。

 

エアークローゼットは、約10万着の取り扱い商品をすべて自社で在庫にしています。

 

それらの在庫は、大和ハウス工業のAIやロボットが導入された新型の物流施設で、

管理されています。

 

収益モデル

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月額サブスクリプションによるユーザー課金がメインの収益となっています。

 

しかし、洋服という商品の1着あたりの原価率は高く、プランごとに料金設定は変えているものの、商品の管理やメンテナス、物流、スタイリングなど様々な諸経費を含めると、非常に利益を出しにくいビジネスモデルと言えます。

 

現状の会員数では、まだ継続的な利益が確保できる状態ではないことが伺えます。

 

これから、さらに会員数を増化していくことが中期的な課題のように思います。

しかしコロナウィルスの影響による社会変化で、

さらに需要が高まっていくることが期待できる分野でもあると感じます。

 

まとめ

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世の中にあふれる情報やサービスが信じられないほどのスピードで増えている中で、

多くの人が行動の取捨選択をするようになっています。

 

そして、これまでは自分自身で「行動する」という選択をしていた事も、「任せてしまう」ことや「もうしない」という選択をして、本当にやりたいことだけをして「生活の質を上げる」という生き方が主流になっていると感じます。

 

また、そのように行動が洗練されることで、「不要な物を持たなくなる」という傾向もますます強まっています。

 

そのような時代感の生活様式に、ファッションという側面で絶妙にマッチしているのが、エアークローゼットの提供するサービスだと言えます。

参照