【企業分析】STAFF STARTから学ぶ「人」を起点とするアパレルEC。
コロナウィルスの影響で、ビジネスにおける大きな地殻変動が起きている中で、様々な業界でオンラインへのシフトが起きているのは、自明の事実です。
その中でも、アパレル業界というこれまでデジタルシフトがなかなか進まなかった業界において、業界特有のアナログな部分を活かしながらも、斬新なアプローチで大きな成長を遂げている企業があります。
それが、今回ご紹介する「STAFF START」です。
スタッフスタートとは?
「STAFF START」は店舗に所属するスタッフが自社通販サイトやSNS上でのデジタル接客を可能にするスタッフテックサービスです。ブランドに所属するスタッフが、コーディネート投稿などを通じ自社商品の紹介をすることで販売につなげることのできるツールで、スタッフコンテンツ経由での販売実績はスタッフごとに集計され貢献度を可視化することができます。
STAFF STARTコンテンツを経由した年間流通総額(2019年9月~2020年8月):88,225,017,538円
導入ブランド数:1019
1スタッフの月間最高売上:90,815,586円
1コンテンツの最高売上:12,278,640円
PRTIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000010183.html
「STAFF START」のビジネスフレームワーク分析
- 「ターゲット」⇒顧客
- 「バリュー」⇒提供価値
- 「ケイパビリティ」⇒リソース・オペレーション
- 「ビジネスモデル」⇒プロフィット
この4つの切り口から分析を行っていきます。
ターゲット
アパレル店舗の店頭スタッフ
「STAFF START」は社長である小野里氏がアパレルで働く友達との会話の中から着想を得たビジネスモデルだと言います。
「販売員はツライよ。こっちはECに売上を持っていかれてさ、それに比べてEC側のお前はいいよな」と言われたことがキッカケでした。その時に、アパレルに限らずこれからの小売事業は、販売員がもっと元気に楽しく仕事を出来るような仕組みでないといけない、という発想が生まれました。
これまでも利益率の高いアパレルのECは、各企業の中で進められてきました。
しかし、多くの企業においてはコントロール権を本社が握っており、各実店舗は在庫や売上実績を吸い上げられるという状況に対して、特に地方の店舗などを中心にスタッフが不満を感じているという課題感がありました。
そこに対してメスを入れる「店舗スタッフにフォーカスするファッションECビジネス」という斬新なアプローチが、「STAFF START」のターゲティング戦略だと言えます。
バリュー
「企業と販売員と顧客のエンゲージメント向上」
アパレル業界の実情について、小野里氏は以下のように語ります。
アパレル業界の売上のうち、85%という市場が実店舗であるという絶対的な前提条件から、大切にすべきは販売員だということです。販売員によって85%の市場を良くすると。しかも、店舗にはアパレル企業の90%の社員がいるわけです。そこを盛り上げられるか盛り上げられないかだと思います。
アパレルEC各社が目指すファッションの未来は、人件費を圧縮した高効率・高利益率の方向に向かっています。
しかし、「STAFF START」の目指すファッションの未来は、あくまでもアパレルの魅力は、単なる商品だけでなく、販売など「人」が介在することで、生まれる魅力やストーリーであるという考え方です。
つまり、本当にアパレルにおいて最も価値のある「販売員」を削減するのではなく、そのポテンシャルを最大限引き出すことで、最終的な顧客満足も上げていくという考え方には、非常に共感することができます。
ケイパビリティ
コーディネート投稿機能
販売スタッフが撮影したコーディネート写真に商品情報を紐づけ、ブランドの自社通販サイトなどに投稿する機能
SNS連動機能
コーディネート投稿などを個人のInstagramなどのSNSに同時に投稿することができる機能
バイヤー機能
バイヤーやMD(マーチャンダイザー)などが販売を検討しているサンプル品の情報を販売スタッフに共有し、現場の販売スタッフが「売れそう」か「売れなそう」かを評価できる機能
ビジネスモデル
アプリケーションの利用手数料
「STAFF START」のマネタイズの可能性は、今後さらに広がっていくと思います。
アプリの利用企業が増えることでの利用手数料による収益増加は今後も予想ができます。
そして、さらにそれによって収集情報が増えることで、利用企業のコンサルティングや、データ分析から生まれる新しいビジネスモデルの創出など、様々な可能性を秘めていると言えます。