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30代ビジネスマンの備忘録。 マネジメントやマーケティングに関するビジネススキルや、サウナ、ウィスキー、時計などの趣味について。

【書評】『自分の中に毒を持て』から学ぶ人生との向き合い方。

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【書評】『自分の中に毒を持て』から学ぶ人生との向き合い方。

 

芸術家の岡本太郎氏がこの世を去る3年前の1993年に出版され、今なお読み継がれる名著が『自分の中に毒を持て』です。

 

以前から本書の存在は、様々なところで見聞きしていましたが、今回初めて手に取って大きな衝撃を受けました。

 

それは、自分の死でさえも恐れない挑戦的な姿勢です。

芸術にとどまらず、どんな分野にも共通する「生き方」についての本質論が展開されています。

 

正直、岡本氏が語る世界観の理解には、本書を一回読んだだけでは、全く及ばないと思いますが、その中からサラリーマン目線で感じた重要なエッセンスについてまとめていきたいと思います。

 

岡本太郎氏の略歴

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1929年、岡本太郎は18歳でパリに渡った。日本から遊学する画家達が日本人だけで固まり、帰国後の凱旋展を夢見てお定まりの風景画を描いている姿に失望した太郎は、フランス社会で自立したいと考え、私学の寄宿生となってフランス語を磨き、西洋の教養を身につけていく。やがてモンパルナスにアトリエを構え、1940年にパリを離れるまで10年以上にわたって1930年代のパリで唯一無二の経験を重ねた。

1970年(昭和45年)に大阪で万国博覧会が開催されることが決まり、通産官僚の堺屋太一ら主催者(国)は紆余曲折の末、テーマ展示のプロデューサー就任を要請した。岡本は承諾すると、「とにかくべらぼうなものを作ってやる」と構想を練り、出来上がったのが『太陽の塔』であった。

この日本万国博覧会は各方面に影響を与えた。1975年(昭和50年)、『太陽の塔』の永久保存が決定。現在も大阪のシンボルとして愛されている。

https://taro-okamoto.or.jp/taro-okamoto/

 

自分自身とどのように向き合うか?

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「安全な道をとるか、危険な道をとるか」

僕らは人生において、常にこの選択が迫られています。

そして、ほとんどの人は無意識的に「安全な道」を選んでいます。

 

岡本氏もパリで芸術家修行をしている時に、同様の問題に直面したと語られています。

 

  • 「絵描きは絵の腕前だけ磨けばよいのか?」
  • 「一つの道を極めて報われるだけでよいのか?」
  • 「絵で成功することが自分の目的なのか?」

 

その疑問から岡本氏が下した決断は、

「自分という全存在、そして生命が完全燃焼する生き方をする」

というものです。

 

つまり、既存の芸術という枠をも超えた自己表現をすることが自分の道だと決め、それによって、誰からも受け入れられない状況や生活がままならない状況に陥ることすら受け入れるという覚悟を決めたということです。

 

それは、常に死と隣合わせの生き方である一方、自分の生命をリアルに感じられる生き方でもあると思います。

 

この自分自身に対する覚悟が、岡本氏が「唯一無二の存在」と後世まで語られる最大の理由だと感じます。

 

芸術との向き合い方。

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岡本氏は、芸術の根本三原則として以下のようなことを語ります。

 

1.芸術はきれいであってはいけない

2.うまくあってはいけない

3.心地よくあってはいけない。

 

その理由として、人が「きれい」や「うまい」と感じる感覚は、時代によって「型」があることが挙げられます。

 

平安時代や江戸時代に「美人」と言われていた人が、現代でも「美人」と言われるか?というと少し違和感があります。

 

芸術は、そのように大衆によって形作られた「時代の基準」に迎合してはならない。というのが、岡本氏の考えです。

 

本書では、こんな印象的なエピソードがあります。

 

東京のデパートで大規模な個展をひらいた。ある日、会場に行くと、番をしていた人が面白そうに、ぼくに近づいてきた。にやにや笑いながら報告するのだ。混みあった場内でもちょっと目に立つ女性が、二時間あまりもじいっと絵の前に立っていた。そのうちポツンと、「いやな感じ!」そう言って立ち去った、という。

報告しながら、相手はぼくの反応をいたずらっぽくうかがっている。さすがの岡本太郎もギャフンとするだろう、と期待したらしい。ところがぼくは逆にすっかり嬉しくなってしまったのである。

 

岡本氏にとって、作品とは自分が生きているアカシであり、燃えている生命を表すものであり、それを真正面から受け入れることは決して心地の良いものではないのです。

 

その本質的な部分をエピソードの女性が感じとっていたことに、岡本氏は「嬉しい」という表現をしたのだと言えます。

 

何事においても、表層的に「いいね!」というのは簡単です。

しかし、本当の意味で向き合ってそこからにじみ出るもの感じ取る姿勢というのは、ほとんどがしていないことだと思います。

 

過去の時代に比べて、情報のスピードも量もケタ違いの現在だからこそ「向き合う」ことの重要性がますます大切になってくると感じます。

 

これから僕らがすべきこと。

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「死を覚悟するほどの決断」は、誰もができるものではありません。

多くの人は、自分の前に現れる様々な選択に迷い、そして新たな選択を模索しながら生きていると思います。

 

僕もその一人ですが、そんな「迷える読者」に対して岡本氏はアドバイスを残しています。

・ 計画は立てるな。

・三日坊主でいい

・‘今‘を大切に。

 

つまり、自分の本心に対して素直になるということです。

計画を立てて「いずれは…」なんて言っているうちに、一瞬で大切な時間は過ぎ去っていきます。

実際にやってみて「違う」と思うこともあると思いますが、そう思うのであればすぐやめてしまえばいいのです。

 

そして、ひたすらに心の赴くままに、チャレンジをする中で、自分が本心から情熱を注げるものに出会うことができるという考え方です。

 

感想

芸術家・岡本太郎氏の生き方は、まさに「型」にはまりきったサラリーマンとは、対極の生き方だと感じたことです。

 

本書で語られるような生き様を会社組織で即実践することは、破滅を招きかねないとも言えます。

 

では、僕のような普通のサラリーマンはどうすれば良いか?

と考えると、いきなり独立するのではなく、「自分に対して正直な時間」をつくる。ということだと思います。

 

  • 1つのことに正面からじっくりと向き合う時間をつくる。
  • 新しいことに挑戦する時間をつくる。

 

これらを日々の生活に落とし込んでいく中で、「自分はどう生きたいのか?」という指針を確立することが、「型」から脱する第一歩目だと思います。

 

まずは、その一歩の背中を押してくれる。

「自分の中に毒を持て」は、そんな1冊だと感じました。