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30代ビジネスマンの備忘録。 マネジメントやマーケティングに関するビジネススキルや、サウナ、ウィスキー、時計などの趣味について。

【企業分析】MUSCAから学ぶ持続可能社会を実現するビジネスモデル【イエバエ×テクノロジー】

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【企業分析】MUSCAから学ぶ持続可能社会を実現するビジネスモデル【イエバエ×テクノロジー】

 

SDGsというワードを目にする機会が日増しに増えているに気がします。

 

SDGsとは、20159月の国連サミットで採択され、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標であり、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。

 

17の大きな目標と169のターゲットが存在します。

大きな目標は、3種類に分類できます。

 

  • 貧困や飢餓、健康など開発途上国にまつわる6項目。
  • エネルギーや経済成長など先進国にまつわる6項目。
  • 気候変動や環境保護になど全世界にまつわる5項目。

 

日本国内でも、SDGsの達成に向けて先進的な取り組みをしている企業が多数存在します。その中でも、個人的に特に注目しているのが、「MUSCA」という企業です。

 

 

MUSCAとは?


世界の救世主は“ハエ”!? 【昆虫ベンチャー「ムスカ」のビジネスとは?】

 

「イエバエの幼虫を使って、畜産糞尿や食品残渣等を、高品質な有機肥料と飼料に100%リサイクルする循環システム」を提案する日本企業です。

 

  • TechCrunch Tokyo 2018 Startup Battle最優秀賞
  • GRASSHOPPER DAY 2019 SPRING 初代グランプリ
  • Open Innovation ContestSDGs

などをはじめとして、様々なビジネスにまつわる賞を受賞しています。

 

なぜ、ここまでMUSCAの取り組みが注目されているのか?

そのビジネスモデルをフレームワーク分析していきたいと思います。

 

MUSCAの経営フレームワーク分析

 

  1. 「ターゲット」⇒顧客
  2. 「バリュー」⇒提供価値
  3. 「ケイパビリティ」⇒リソース・オペレーション
  4. 「収益モデル」⇒プロフィット

 

この4つの切り口から分析を行っていきます。

 

ターゲット

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  • 有機廃棄物に困っている自治体、組合、畜産事業者
  • フードロス問題に取り組む食品加工業界、飲食店業界、宿泊業界

 

これらのビジネス上の課題を抱えている組織や企業が、

メインターゲットとなっています。

 

バリュー

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「持続可能社会の実現」という壮大な価値提供です。

 

これまで、ゴミという形でコストを支払って破棄していた排泄物を、

ゴミを一切出さずに有価値なものへ変化させるという、

まるで錬金術のような仕組みが、その価値提供を可能にしています。

 

ケイパビリティ

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MUSCAが持っている最大のリソースは、

45年間1,100世代の選別交配したイエバエ」

です。

 

MUSCAでは、選別された個体を約2週間で、1世代交配の地道に繰り返すことで、

通常種の数倍ものスピードで畜糞を分解し有機肥料化ができる、

「サラブレッド・イエバエ」を誕生させたのです。

 

この交配作業は、旧ソ連の宇宙開発における船内でのバイオマス・リサイクルの技術研究までさかのぼります。

 

その後、ソ連崩壊とともに、MUSCAの前身となる日本企業が、

その技術を買い取り、現在まで脈々と受け継がれています。

 

また、そのようなハエの能力を高い次元に維持しながら交配を行うノウハウは、

ブラックボックス化されており、一朝一夕で同じ能力を持ったハエを生み出すことは、

ほぼできないと言われています。

 

この「交配ノウハウ」も、競合に対して圧倒的差別化要因と言えます。

 

収益モデル

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(引用:https://musca.info/)

MUSCAのビジネスモデルでは、

イエバエの幼虫が排泄物を肥料に変える設備を「プラント」と呼んでおり、

この「プラント」を中心とした流通をパッケージ化することで、

図のような形でマネタイズをしています。

 

  • 廃棄物受け入れ手数料
  • 飼料会社への販売利益
  • 肥料会社への販売利益

 

上記の図のようなパッケージングにより、「トリプルインカム」が発生する仕組みになっているのです。

 

また、このビジネスモデルの強みは、一般的に畜産排泄物は廃棄元が廃棄コストを負担する為、受入れ側であるMUSCAに利益が発生します。これは、コストセンターである仕入れ部分がプロフィットセンターになるという点です。

 

まとめ

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世界で取組が本格化しているSDGsの取り組みをいち早く実践している企業と言えます。

また、既に国内でも伊藤忠商事や丸紅をはじめとした大手企業とも提携する流れがあり、これからますます拡大していくビジネスモデルであることは間違いありません。

参照