【書評】『佐藤可士和の打ち合わせ』
【書評】『佐藤可士和の打ち合わせ』
「打ち合わせ」
普段の仕事の中では、数あるタスクのうちの一つとして…あるいは、聞き手に徹して何も考えずに過ごしてしまっている人も多いのではないでしょうか。
僕もその一人だったかもしれません。
しかし、仕事の生産性や最終的なアウトプットを高める方法として、「打ち合わせを制すること」が最も効率良い方法なのではないか。
ある1冊の本を通して、そんな「打ち合わせ」に対する僕のイメージを大きく変わりました。
その本は、『佐藤可士和の打ち合わせ』という1冊です。
本書を読み進めていくうちに感じたことは、打ち合わせの技術はすべてのビジネスコミュニケーションに応用可能であるという点です。
今回の記事では、「打ち合わせのスキル」を自分のものにして、仕事全体を上手く回していく為に必要な打ち合わせの設計方法や、持つべきマインドセットについてまとめてみたいと思います。
佐藤可士和流・打ち合わせの設計
目的を決める
「いつまでに、どんな結果を出すのか?」
どんな打ち合わせでも、必ず目的が必要です。
集まることだけの目的のものは、もはや打ち合わせとも呼ぶことはできません。
しかし、ビジネスの現場では、集まることが意義になってしまっている打ち合わせが山のようにあります。
百歩譲って、ふわっとした目的が決まっていたとしても、そこから踏み込んで「いつまで」という期限や、具体的な「成果物」が決まっているケースは非常に少ないように思います。
この「いつまでに、どんな結果を出すのか?」という目的意識を持つだけで、打ち合わせが意味を持つようになり、スピード感も飛躍的に高まるのです。
「例えば、漠然と「会社のブランディングをなんとかしたい」といっても、それだけでは、なかなかプロジェクトは前に進みません。だから、リブランディングを象徴するようなリリース日を設定するのです。
決め方としては、「新商品が出る」など、何らかの発表に合わせてしまうこともありますし、きりのいいところで半年後、1年後に設定することもあります。」
全体像を決める
「ゴールに向かうまでに何が必要になるか、しっかりプロジェクトの中身を洗い出しておくこと。」
そのように全体像を把握することで、何度の打ち合わせを行う必要があるのか?ということを事前に決まってきます。
なぜ、それが必要なのか?というと、打ち合わせはやろうと思えばいくらでも出来てしまうからです。
これは僕自身の反省点でもありますが、全体像を捉えずに行き当たりばったりでプロジェクトを進めてしまうと、何も決まらない打ち合わせが量産されてしまうという悲劇を招くのです。
佐藤氏は、全体像の捉え方について以下のように表現しています。
「建物を造るとき、いきなり中の部屋から作ることはできません。まずは建物全体から考えないといけない。その上で、これは何をやる部屋、これは何をやる部屋、と中身を作っていく。」
体制図の作成
「誰が何をやるのか。誰が責任を持つのか。をはっきりさせる。」
組織として目的達成に向けたプロジェクトを実行していく為には、多くの人を巻き込むことが必要不可欠です。
その時に、役割や責任が曖昧なままだと物事は一向に前に進みません。
体制図を作ることは、プロジェクトに関わるメンバーに安心感を与えるだけでなく、第3者にとっても全体的な構造把握をしてもらう為の有効なツールとして機能するのです。
野球でいえば、誰がどこを守るのか?
バンドでいえば、誰がボーカルで、誰がギターなのか?
を決めることと同じことです。
打ち合わせで持つべきマインドセット
イメージを持つ
佐藤氏は打ち合わせにおいても最も大切なことは、「イメ―ジを持つこと」だと言いきります。
その理由は、全くゼロの状態からでは、打ち合わせにはならないからです。
あくまで、「こんなものがあったらいい」「こんなことが起こったらいい」という自分なりのイメージを自分で持ちつつ、それらを議論していくことに打ち合わせの価値があるからです。
書類やファイルは持ってきているけど、読み込んでもいない。
このような状態では、「打ち合わせを価値あるものにする」という視点に立つと、圧倒的に遅いのです。
時間コストの意識
「タイム・イズ・マネー」という言葉があるように、時間とはコストであるという認識を持つことが大切です。
仕事がデキると言われている人ほど、その認識は強く、無駄な時間をつくりません。
例えば、打ち合わせの時間ギリギリに到着してしまい、開始時間が5分遅れたとしたら、その場に参加していた人数×5分という時間が失われたことを意味します。
10人参加していたら、5分の遅れが50分の損失という計算にもなります。
その場で決める覚悟
「打ち合わせにおいて持ち帰りはNG」
打ち合わせのクロージングの理想のカタチは…
- 今日はこれが決まった。
- 次までにこれを決める。
- その為の宿題はこれ。
といった現在から未来にかけてのアクションが明確になっている状態です。
これは、今日の打ち合わせでは「ここまで決める」という意識の持ちように他なりません。
まとめ
「時間に対しての飛距離の意識」
この本の中でも特に本質的だと感じたフレーズです。
僕らは打ち合わせという時間をあまりに無目的に過ごしすぎだと改めて感じました。
限られた時間の中で、どこを目指しているのか?
そんなことを考えさせられる1冊です。