望まない昇進でモチベーションが上がらない部下にどう接するか。
「仕事をしている実感が湧かない」
小売業の実店舗におけるマメジメントから、本社スタッフへ異動してばかりの部下であるO君が打ち明けてきたことです。社内の立場上は、昇進したにも関わらず…なんとも言えないモヤモヤを抱えながら仕事をしていました。
O君曰く…
「これまで、日々の販売目標達成に向けて、お客さんと対面しながら、チーム全員で切磋琢磨するというのが日常だった。大変ですが、ダイレクトにやりがいを感じることができる環境でもあった。」
「でも、本社での業務は、来る日も来る日も書類作成と社内調整を機械のように淡々と行う日々が続き、定時に帰ることはできますが、自分が何かを動かしているという実感はないです。」
O君の感じていることは、良くわかりました。
僕自身、彼と非常に近いキャリアステップを歩んできたし、同様の感情も抱えていたからです。
そんな自分だからこそ、アドバイスもあるんじゃないか?と思い、O君と話し込んだことについてまとめてみたいと思います。
どんな仕事にもやり込むことで見える面白さがある。
仕事というのは「楽しさ」と「苦しさ」の二面性があると思っています。
そして、多くの場合は「苦しさ」の方が先に現れてきます。
恐らくそれはどんな仕事も同じで、現場の仕事が大好きだったO君も最初からそれが大好きだったわけではなく、少しずつ経験を積み重ねて仕事のスキルが上達する中で、「楽しさ」を覚える場面が増えてきたのだと思います。
ところが、人はこの「少しずつ好きになっていった」という経験を忘れがちで、ある一定の期間を超えると、「元々自分はこれがすごい好きだったんだ」という錯覚を覚えてしまいがちなところがあると思っています。
まさに、いまO君がぶつかる壁も、過去の仕事に対する自分の活躍を美化しすぎて、新しい仕事でうまくいかない自分の苦しさを受け入れられないという類のものだと思います。
このマインドに変えていくには、やはり初心にかえって、最初の段階でぶつかる苦しさをひたすら乗り越えることが大切だとO君に伝えました。
本社の仕事に本当に向いているのか、いないのかというのは、その苦しさを乗り越え、さらに楽しさの見つけることができた後でしか、本当に正しい判断はできないはずだからです。
プライベートできることはないか?
それでも、どうしても仕事に身が入らないこともあるかもしれません。
そんな時に備えて、O君にアドバイスしたことは、プライベートの時間の使い方です。
元々の現場の仕事で最もモチベーションになっていたことを、プライベートで補うという方法です。
例えば、仕事における「チームプレー」がその源泉だったのだとしたら、チームスポーツのサークルなどに参加してみる。
例えば、お客さんからの「感謝の声」がその源泉だったのだとしたら、ボランティアに参加してみる。
こんな選択肢があると思います。
自分に活力をもたらしてくれるファクターは、仕事から得られるに越したことはありませんが、絶対に仕事から得なくてはいけないという決まりはありません。
最後は自分次第
ここまで、いくつかのマインドセットや手法について話をしましたが、本当に最後は「O君自身がどうしたいか?」ということだと思います。
世の中、寄り道をしないで自分がやりたいことだけを意思を持ってやり抜いている人は一定数います。
例えば、そのような強い意志を元の仕事に求めるのであれば、あえて降格して現場に戻り、そこでスペシャリストを目指すという選択肢も十分にあり得ると思います。
最後の選択は、O君にしかできません。
どのような選択をするかは、O君に任せたいと思います。
それが、上司としてできる精一杯のことだと思いました、